押してダメなら押し続けろ II《 Shoma.Uno 》

78. ページ28

貴方.



『あ、昌磨くん、さとちゃん！おかえり！』

「ただいま〜」

「ただいま、」




小走りでさとちゃんに駆け寄ると、ぎゅうっと抱き着く。自分では平気なつもりだったけど、寂しかったのかな。「どうしたの？」と微笑むさとちゃんに、ほっとした。




「まだ一人は寂しいんだね」

『うーん……そうだねえ。ほとんどの人がバンケットに行ってたから余計に静かで』

「今度から着いておいでよ。ネイサンも残念がって……」




昌磨くんは、ネイサンの名前を出すと、途中で黙り込む。……もしかしてネイサン、何か言ったのかな。




『あ、あの……ネイサンに何か言われたんだったら、気にしなくていいからね』

「心当たりあるの……？」

『うん、まあ……』

「彼、本当にAちゃんに夢中みたいだよね」

『2年前から変わらないんだ』

「2年前？！」




びっくりしたように声を上げる昌磨くん。それもそうだ。2年前なんて、私は14歳でジュニアの選手。ネイサンだってまだ16歳だったんだから。

大会で会うと毎回そばにやってきては、キザなセリフで口説き落とそうとする。初めこそ照れていたものの、今となっては慣れたものだ。

こういうことがあった、と話すと、昌磨くんは「そっか」とすっかり驚いてしまったようで、ぼんやりと下を向いていた。

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