押してダメなら押し続けろ II《 Shoma.Uno 》

76. ページ26

昌磨.



モヤモヤしたままの気持ちで迎えたバンケット。
自分はそんなに騒ぐ方じゃないから、と大人しく過ごしていたけど、気を遣ってくれたさっとんがそばにいてくれる。いつもなら、Aちゃんもいたんだろうけど……




「Aちゃんも来たら良かったのにね」

「うん……まあ、出てないから遠慮しておくって、Aちゃんらしいよね」




残念そうに言ったさっとんは、俺の言葉に少しだけ微笑んだ。同い年で気を許せるからこそ、彼女には何でも話してしまいそうだ。

このまま二人で他愛もない話を続けようとした頃、ネイサンが俺たちの方へやってきた。




「 Hi. Shoma,Satoko !! 」

「ネイサン、」




俺の今の悩みの種である彼は、本当にいい人だと思う。でも……Aちゃんとの関係性が気になって仕方ない。いつ仲良くなったんだろう。

さっきと同じように翻訳してくれるさっとんのおかげで、何とか会話することが出来た。




「Aはいないの？」

「あ……うん。ホテルで待ってるって」

「そうか、残念だなあ」

「……あ、あの、ネイサンは、Aちゃんのことどう思ってるの？」




「 Do you love her ? 」と、流石に俺でも分かるような英語でさっとんが彼にそう聞く。
ふわりと柔らかく微笑んだネイサンは、「 Yes. 」とすぐに肯定した。照れる素振りは一切見せずに。




「彼女はとてもスケートに真摯に向き合っている。そんな姿が美しくて惹かれたんだよ」

「年の差とかは、気にしないの？」

「ああ。愛があればそんなの意味がないだろ？」




その言葉が物凄くグサリときた。そうか。Aちゃんがあそこまで俺に「好き」と伝えてくれるのは、本気で好きでいてくれるから……？

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