押してダメなら押し続けろ II《 Shoma.Uno 》

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昌磨.



「昌磨、遅れてごめんね」

「あ、いえ。今来たところなんで、」




どうやら美穂子先生はAちゃんを女子のショートの見学に連れて行っていたのか、試合用のリンクからこちらに移ってきた。

丁度リンク入りしようとしていた頃だから、タイミングが良かった。

美穂子先生の後ろを着いてくるAちゃんは、なぜか眼鏡をかけている。目、悪かったっけ。




『……』




不思議に思って見ていると、その視線に気付いたのか俺を見る。Aちゃんは薄く微笑んで、ひらひらと手を振った。




「っ、……」




妙に落ち着いた雰囲気から、演技中よく身に纏っている色気が漂う。元々大人っぽい子ではあったけど、こんな雰囲気だったっけ……

とりあえず、バクバクと演技前のように高鳴る鼓動を抑えようと滑り出そうとする。




『あっ、昌磨くん待って！』




Aちゃんに引き止められ、リンクサイドに戻ると、彼女はそっと俺の首元に触れた。

どきり、とまた心臓が跳ねる。




『……はい、チャック巻き込んでた。』

「あ、ありがとう、」

『いいえ！頑張ってね』




……何かがおかしい。

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