13話 ページ14
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思わず立ち上がった。
万理子さんが返事をしながらどこかへ駆けていく様子は襖越しに把握している。おそらく玄関まで行って誰かを出迎えているところだ。
(も、もう来るんだ)
誰が来たにしても挨拶はしなければならないから、そろそろ対面するだろうなというのは念頭にあった。
が、まさかこんな間髪入れずに訪れるとは。
まだ寝転がって5分も経っていないような気はするけれど、そんなの気にしちゃいられない。今にだってきっと陣内家の誰かが刻々とこっちに向かって…
「「「すいかーーー!!!」」」
(ヒェーーー!!!)
今度は思わずしゃがみこんだ。
子供の声が聞こえたかと思うと私がいる部屋の前をドタドタドタと走り抜けていった。
そしてその子供達は万作さんの孫である
真緒、真悟、祐平。
「あんた達走り回らないの!」
「ひー暑かったわ〜、よっこらせっと」
「お邪魔しますー」
どの声も聞き覚えがありすぎて、私はさらに縮こまる。この3人の女性は陣内家に嫁いできたお母さん方。上から順に典子さん、由美さん、奈々さん。
そしてついには、
「ただいま〜」
「お、お邪魔します…」
夏希ちゃんに健二くん。
気づけば部屋の隅っこに移動していた私は緊張からか高揚からか、わずかに震え始めている。
声を聞いただけでこれだなんて、直接会ったらどうなってしまうんだろう。
(ぞくぞく登場にもほどがある…もうちょっと時間をくれてもよかったのでは…)
というのは無理なお願いで、この調子じゃ全員集合するのも時間の問題だ。毎度毎度縮こまっていてはいつ消えて無くなるのやら分かったもんじゃないので、たじろぐのはここまでにしておく。
そう、主人公とヒロインはすでにおでましなんだからもうこれ以上の驚きはないはずなのだ。おそらく。
そうとなれば…と、勢いよく立ち上がりずんずんと前へ歩み出す。
なぁに、いっちょ私から挨拶のひとつやふたつ、かましてきますか!
「真悟ー!あんた脱いだ靴はちゃんと揃えなさい!」
……万理子さんの呼びかけを待ちましょう。はい、そうしましょうね。
歩み出した足は再び部屋の隅へUターン。やっぱり万理子さんを通しての挨拶でないと気が気でなくなりそうなので、ここは大人しく三角座り。
ヘタレだなあ、つくづくヘタレ。
ちゃんと挨拶できるかな。ちゃんと上手に振る舞えるかな。
大丈夫…だよね。
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*まめ丸*(プロフ) - 坂名つばめさん» いえいえ!!はい!更新ゆっくり少しずつ頑張ってください!!ファイトです!! (2019年7月23日 12時) (レス) id: 7b0adad536 (このIDを非表示/違反報告)
坂名つばめ(プロフ) - *まめ丸*さん» ありがとうございます〜その言葉が本当に励みになります!更新頑張ります! (2019年7月23日 12時) (レス) id: 72f167e803 (このIDを非表示/違反報告)
*まめ丸*(プロフ) - 初めまして!!この度見させて頂いて物凄くハマりました!!おかげで元気とワクワクを貰っています!!これからも頑張ってください!!(*´▽`*) (2019年7月23日 0時) (レス) id: 7b0adad536 (このIDを非表示/違反報告)
坂名つばめ(プロフ) - 自衛隊員さん» ありがとうございます〜!頻度上げられるよう頑張りますねヽ(^^)ノ (2018年12月6日 20時) (レス) id: 72f167e803 (このIDを非表示/違反報告)
自衛隊員(プロフ) - 合格、おめでとうございます!!更新を楽しみにしております!! (2018年12月5日 21時) (レス) id: 848cb8c477 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:坂名つばめ | 作成日時:2017年8月28日 3時