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風邪引いてるのに、よく暴れられるな。
廉くんの体力を疑いながら、体温計を専用の容器に戻して棚にしまった後、彼の方を見る。
と、風邪を引いてもなお、かっこいい顔のままで、ぶーたれたような表情で私を睨んでいた。
布団からぴょこっと顔を出して、まるで何処かのぶりっ子中学生かのような表情をする。
瞳はわざと潤ませて、唇を上手い事尖らせる。
いや、だから美しいのは伝わってるから。
「おねーさんが看病してくれて、ちゃんとライブ来るって約束してくれるならいいよ?」
布団を頭から被って、チラチラと様子を伺いながら私の方をねだるような目で見てきた。
何だその目は、って思ったけど…
あくまでも病人なんだし、仕方ないかってね。
“ あー、はいはい、約束しますー ” なんて適当に声を掛けて終わろうとベッドから立ち上がる。
廉くんとの約束が面倒なわけじゃない…。
こうでもしないと廉くんと真面目に話せなくて、本当の気持ちに気付いて変に意識して…
そんな私が、許せなかった。
「なんか、…守りそうにない返事やな」
自分の背中に突き刺さるように飛びかかってきた発言に、心を痛めながら振り返る。
廉くんが遊びで拗ねてるってのは分かってるのに。
やっぱり冗談でも好きな人に信頼されてないっていうのは、かなり傷を抉るような感じで。
出会って間もないから信頼もクソもないって、心の中ではちゃんと分かってるつもりなんだけど。
だからこそ、私はそれを隠すの。
「そう?じゃあ、約束しない?」
「…おねーさんの方が上手やった、…」
「ふふ、笑」
余裕のあるような表情で微笑み返せば、“ いやや ” とかワガママっぽい返事はせずに、
そうやって下唇を噛み締めた廉くん。
その姿が可愛くって目を細めて笑ってしまう。
ベッドの上で何故か体育座りのまま、肩から布団を重たそうに掛けて、拗ねている様子。
ずっとブツブツと何か言ってたみたいだったから、
ちょっとだけ怖くなって、放っておいた方が廉くんのためにもなるかなって思って部屋を出た。
寝室を後にして、キッチンへと向かう。
とりあえず、スポーツドリンクとゼリーと、風邪薬とか食べられそうな物を買ってこよう。
たまたま日曜日で休みだから良かったものの…
私が仕事だったらと思うと、廉くんがどうなってたか想像してただけで寒気がする。
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よえとぎ(プロフ) - ちなみ氏さん» コメントありがとうございます。そう言っていただけるととても助かります!次の作品は上手く出来るように励むので覗いてみてくださいねw (2018年7月4日 11時) (レス) id: 1406827af9 (このIDを非表示/違反報告)
ちなみ氏(プロフ) - よえとぎさんの小説は毎日の楽しみです。完結の仕方はご自身が納得されてるのであれば全然ありだと思います!おつかれさまでした┏○)) また次作も楽しみにしております! (2018年7月4日 8時) (レス) id: 9730464fb1 (このIDを非表示/違反報告)
よえとぎ(プロフ) - あやさん» コメントありがとうございます。頑張りますね! (2018年6月16日 22時) (レス) id: 1406827af9 (このIDを非表示/違反報告)
あや - たのしみにしてます! (2018年6月16日 21時) (レス) id: 3349337455 (このIDを非表示/違反報告)
よえとぎ(プロフ) - 西野ぴよこさん» コメントありがとうございます。これからも廉くん目線を増やしていくつもりなので、期待しててください! (2018年6月13日 16時) (レス) id: 1406827af9 (このIDを非表示/違反報告)
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