孤独な心(序章) ページ9
───とある警察署の資料室に保管されている、埃の被ったとある映像にて。
短い白髪のまだあどけなさが残る青年が映像から見られる。その瞳はオレンジ色の渦巻状が特徴的な青年で、髪色以外は尾幸××と全く同じ様な外見である。
(青年が歩き、そして椅子に拘束される)
「君が、尾幸 むう君だね?私は君の担当になったカウンセラー…そうだな、『八重』(やえ)先生と呼んでくれよ。警察みたいに君を取り調べはしない。ただ楽しくお話をするだけだからねぇ」
八重先生と言った人物はむうに横にいる警察にシッシッと手を追い払う様に追い出す。そうして、その部屋は八重先生と拘束されたむうのみという緊迫した状況が展開されていた。
しかし、そんな経験は何度もあるのか八重先生は状況を気にせずテーブルに足を乗せて組み楽な姿勢で話をする。視線は警戒する様にジッとむうを捉えていた。
「はい、じゃあ先ずは雑談でもしましょうかぁ、むう君。君はちょっとオレちゃんが受けたことのある犯罪者とは違ってまだ比較的幼いからね。好きな遊びとかあるかい?」
「……」
「……ふぅん、無視かぁ。じゃあ好きな色とか。オレちゃんはぁ緑が好きだよ。目に優しいグリーンカラー。それにほら、先生のこのツヤツヤの1つ結びした長髪も緑だしね。」
「………。」
「…………(うーん、話をしてもらわないとカウンセリング出来ないんだけどなぁ)」
「……せんせえ。」
「はい先生です、なんでしょう?」
「……なに言ってるか、わからない」
その顔は言語を音としてしか認識していないと言った様子で、感情が抜けている。しかもむうが話す言葉は暫く話していないのか発音が拙い。
「(この状態……父親は義務教育をさせていなかったのかなぁ?)ああ、そうか。じゃあ短く簡単に、ゆっくりめに話すよ。分からないことがあったら言ってねぇ?」
コクリとむうは頷く。しかし、その表情は相変わらず何も感情が入っていない傀儡の様だ。普通の人ならその顔を見て不気味だと思う人もいるかもしれない。
それに、この子はひたすら先生の目を見ているのではなく、先生の首や腕を執着するかのように見つめていた。
「……はぁい、じゃあ改めて質問してくね。気分はどう?」
「きぶん……?」
「そう、気分。」
「……ちょっと、顔の傷が痛む。それだけ」
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作者名:晴傘 | 作成日時:2024年3月5日 6時