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悪夢 ページ23

───深夜、むうが住む廃墟のビルにて


むうは、突然目を覚まし、体をベットから起こして状況を確認する。全身からは冷や汗が出て一瞬だけ呼吸の仕方が分からなくなった。


周りは未だ暗く時計を見ると2時あたりを指していた。とり敢えずむうは無理矢理呼吸を整え、自身を落ち着かせようとする。
何度も夢で見たその顔が頭の中でフラッシュバックしていた。何度も何度も…


その場でむうは頭を抱える。あの顔がいまだ忘れられないのか、もう過去の話だろ。と宥める様に心の中で唱えるが状況は良くならない。




……ふいに、背後から何か抱き着かれるような実態があるようでない感覚を覚えた。その感覚は覚えのある感覚で、サッとむうの顔が青ざめる。そんなわけない、なんでっ、なんだ…?


「なあ、むう。父さんである『僕』の言うことを聞かず相変わらずのうのうと生きてるのか?…僕を殺したのに」


幻聴であろうその声はむうの中では現実となり、耳元ではっきりと聞こえる。金縛りにあっているかのように何も言い出せなかった。ただ「あ、ひっ…」と引き攣るような声しか出ない。


「はは、なんだいその声は?父さんぐらいは言ってくれてもいいじゃないか、むう。昔はそうだったのにな…クソ親父と呼ばれて最近僕は悲しいんだよ?」


頭にこびりつくの様な異常に穏やかで優しく諭す様な声は、むうの正常な精神をジワジワと蝕んでいく。むうの背後から抱き着くその腕はむうの首を絞めつけるかのようだった…むうを徹底的に服従させ反抗させないかのように。


「相変わらずむうは他の兄弟とは比べて、背が小さいね。…他の兄弟の肉も食べさせたのに」


「や、やめろ…」


「君はなーんにも知らずに笑顔で食べてくれたね。あの時本当に僕は嬉しかったんだよ?…特に、君が一番僕以上に懐いていた兄弟…長男であるロースのように綺麗な赤髪が映える『ひい』なんて、正体がわかっても泣きながら食べてくれたじゃないか?」


「やめてくれ、オレちゃんは…」


「?…『オレちゃん』?僕は一人称を父さんも使う『僕』にしろと何度も言い聞かせてたはずなんだけどな」


「……っ」


「僕は、僕のように精巧な人間に近い存在じゃないと子供として…いいや、人間としても愛せないんだ。それは百も承知なはずだろう?統一された家族(集団)より理想的で完璧なものはない…親は子に知識と思想を分け与え、子は親を見習い、尽くすんだ……永遠にね」

*→←オレちゃんの一日ルーティーン!(午後)



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作者名:晴傘 | 作成日時:2024年3月5日 6時

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