化け物の住処(前編) ページ3
───とある、カンダブル街にある××廃ビルにて。
この××廃ビルは、現在のむうの家になる前までは、カンダブル街周辺ではある程度知られた闇オークションが開催されていた。
その会場では、有名な大手企業の者や名の知れた富豪が集まり、その××廃ビルで日々交渉が行われ、日々賄賂が横行している。
そのビルの前で、異質な人物が一人。
「このビル、欲しいなぁ…」
そう呟く男、『尾幸 むう』はニタリと鋭い歯を覗かせながらそのビルを見た。顔を隠す様に伸びた白髪の髪が風で微かになびく。
すると、廃ビルの入口付近で佇んでいた屈強な身体の人物がむうの近くに佇んだ。
「おい、お前このビルに何か用があるのか?」
「いや、ないぜ?でもこの廃ビルは廃墟な癖に撤去するのが名残惜しいぐらいに、住み心地が良さそうだなぁと思ってただけだ」
「お前、何馬鹿げた事言ってやがる?用がないならさっさと失せろ」
「へーへー、言われなくてもそうするぜ」
そう言いながらむうは潔くその場から撤退した。
「全く、変な奴だ。こんなビルに住みたいだなんて…このビルは違法建築だらけの建造物だって言うのに…」
と愚痴の様に言う屈強な男は、一見その廃ビルを撤去する作業員のように見えるが、本来は闇オークションに買収されている監視役であった。
この廃ビルには警察などに嗅ぎつけられないように、こうして二十四時間体制で見張っているのだ。
そうして、むうは退散したと思わせておいてそれを陰ながら見ていた。
(うーん…こりゃ正面突破は難しそうだな。なら、別の方法を考えて見るしかないかぁ)
むうは撤収した様に見せかけ、近くの裏路地に隠れジッとその様子を伺う。
───そうして、むうがその廃ビルを住処にするまであとニ日。
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作者名:晴傘 | 作成日時:2024年3月5日 6時