孤独な心(第9回カウンセリング) ページ16
───このカウンセリングはレポート用紙が紛失し、録画のみの様だ。それも、損傷が激しく警察が無理矢理修復したもののようであった(防犯カメラのデータを移行する際に損傷が激しく、自動消去される可能性があるため)。
しかし、損傷した影響で音声は聞こえなくなっている。
以降の文章はその状況をまとめたものである。
00:03 変わらず八重先生とむうは対面するように座り、いつも通り落ち着いたように話している。
00:50 八重先生は膝をテーブルにつき、手の上に頭を乗せむうに何か言うようなそぶりを見せる。しかし、何を言っているかは不明。
01:00 むうはその言葉を返すように一通り話した後、何かを偽るかのようにむうらしくない笑顔でニコリとほほ笑む。
01:10 その言葉にほんの僅かに八重先生の目が見開き、数回こちらの録音しているカメラのほうを見て、何かを言う。
01:18 むうはその言葉に変わらず微笑みながら返すと、こちらのカメラに拘束された手を振る。
01:30 そして、むうは八重先生を見ると申し訳なさそうな顔をして話を続ける。口の動きからして「ごめんなさい」の様な事を言っているようだ。
01:45 その言葉に心底呆れたように八重先生は顔に少しの沈黙の末、手を当てた後、先生は再び話を始める。それにむうは承諾する。
09:45 そうして、しばらくして何か一通り決まったのであろうか。八重先生は眉間にしわを寄せ何かをこらえるようにして笑う。その顔は我が子に怒る親の様な顔つきをしていたが、咎める気は無いようだ。
10:00 すると、時間だからか警官がむうを連れ帰る様にこの部屋に来る。そうして、警官が近づいたのを合図としてむうは警官から距離が近かった左手を警官が解除する前に事前に抜けていたのであろう、拘束具から手を抜け出しその警官の首に峰打ちをして気絶させる。
10:02 他の拘束具も事前に抜けていたのか全ての拘束具を自身の力で易々と抜け出し警官の帽子を被る。どうやら警官の服を着て変装を考えているようだ。
10:05一方、八重先生は椅子に寄りかかり、足を机に置いて煙草を吸い始める。その間に、何事も無かったかのように穏やかな顔でむうに語り始めた。むうはその言葉に図星だったのか驚いてからニヤリと骨格をあげる。しかし、その顔はどこか寂しそうで顔が僅かに歪んでいた。
ここには再び戻ることは無い、いや戻る訳にはいかないという決意を決めたかのように。
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作者名:晴傘 | 作成日時:2024年3月5日 6時