Stars Ⅰ -短編集- (ページ8)

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子犬のように精悍に - R.H ページ8

彼がいきなり顔を近ずけてきた。いつもの子犬のような彼とは違い、このときは、とても男らしく精悍で、戸惑った。鼻がつきそうな距離に彼の顔がある。

「良亮ちょっと」待って、と言葉にする前に突然、口を塞がれた。突然の行動に精一杯、抵抗するが敵うはずがない。どうすることも出来なく、おとなしく口が空くのを待つしかない。

彼はこの状況が嬉しいのか、楽しいのかニヤニヤとしていた。私も必死なのに、と怒りたくもなるが口を塞がれているので、どうにもならない。

やっと口が空き彼に精一杯の悪態をつく。「なんでいきなり私の口にお寿司、入れるのよ！」今夜は良亮の家でお寿司を食べていた。そのお寿司を彼は、私の口に無理やり突っ込んだ。さっきの精悍な顔はどこへやら、彼は子供のように笑っている。私が口いっぱいにお寿司を詰め、飲み込もうと必死になる姿がよほど面白かったのか、ずっと笑っている。まるで爆笑しているようだ。

「喉、詰まりそうだったんだからね！？」彼を睨みながら言う。

「ごめん、ごめん。でも可愛かったよ？」彼は謝る気なんてさらさら無いように言い、また、笑った。

「可愛かったよ、なんて言葉じゃ騙されないのよ」そう言うと彼は、さっきのように精悍な顔を作り、近づいてきた。

「もうその手には乗りませんよ」私がそう言うと彼はニヤッと笑い、彼自身の唇を私の耳に移動させた。思いもよらぬ行動に驚く。彼の息遣いが聞こえ、ドキドキする。

「今夜はさ」彼は一言、言うと焦らすように彼自身の唇をひと舐めした。

「はっきり言って壊れたいんだよね」抵抗する間もなくソファーに押し倒され、突然、口を塞がれた。こんどはお寿司なんかではく、彼の唇だった。