Stars Ⅰ -短編集- (ページ3)

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早く気がついて - F.K ページ3

「河合くーん？暇でしょ？ちょっと付き合ってよ。いつもの居酒屋にいるからさ。待ってるからね」相手の返事も聞かずに電話を切った。

「またフられたのかよ」彼はすぐに来た。そして私の隣に座った途端、この話題。

「フられた」

「これで何連続だよ」

「数えさせないでよ」誰かと付き合っては、すぐにフられる。そして淋しさを埋めるためか、また、誰かと付き合う。誰と付き合ってもうまく行かない。そして居酒屋に彼を呼び出す。その繰り返しだ。

「またお決まりの別れ台詞、言われたんだろ？」彼がニヤニヤしながら訊いてくる。彼の顔にイライラしながらも、そうだよ、と答える。

いつも、本当に俺のこと好きなの？なんて台詞でフられてしまう。

「もう、どうしょもないな。おまえは」彼が笑いながら言う。

「もうちょっと優しくしてくれたっていいじゃない」不貞腐れながら言う。

「おまえが男と別れるたびに呼び出される俺の気持ちにもなってみろよ」そう言った彼は少し怒ったように見えたが、次にはまた悪態をつきはじめる。

「そろそろ終電やばいんじゃない」話し込んでいて気がつかなかったが、飲み始めてからかなり時間が経っていた。急いで会計を済ませ店の外に出る。

「河合くん。いつもごめんね。ありがとう」こんな私に付き合ってくれてありがとう、と彼に伝えた。

「いいよ、別に」と素っ気なく答えるが、顔はなんだか悲しそうだった。心配になり、どうしたの？と訊いた。

大きくため息をつくと「なんでもないよ」と怒ったように彼は言う。

なんだか気まずくなり、足速に立ち去る私の背中に向けて彼は呟いた。

「早く気付けよ」けれどその言葉が私に届くことはなかった。