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彰吾side



彰「あー、ネクタイ忘れたんやった。」



唐突に、先月Aの部屋で夕飯を食べた際にネクタイを忘れていたことを思い出した。


最近なぜかAと連絡が取れていないし、会えてもいない。




だから様子見も兼ねて忘れないうちに取りに行こうと、Aの部屋に向かった。





インターホンを押してみたはいいものの、一向に出てくる気配はない。





今までこんなことは一度もなくて、心配になった。





もう一度インターホンを鳴らしても出てくる気配はなく、結局合鍵を使って部屋に入った。





車もあったし、部屋にはいるはずなんやけどな。





そんな呑気なことを考えながら部屋に上がると、中は薄暗かった。






不思議に思いながらも部屋の奥へと足を進めると、どこか不穏な空気を纏ったAが何かを持って立っていた。





彰「A?」






そう呼んでも返事は返って来ない。




違和感を抱きつつも近づいて行くと、Aの手には俺のネクタイがあった。






そして、それを持つAの手は震えていた。




嫌な予感がした。





彰「A、何してるん」





そう呼びかけてみるものの、またしても反応はない。





彰「A!」






先程よりも少し声を大きくしてみると、驚いたようにこちらを向いた。





すると次の瞬間、Aの体が傾いていった。




咄嗟に駆け寄ってなんとか支えることはできたものの、Aの意識はなかった。




ベッドに寝かせてから部屋の電気をつけると、Aの頬には涙の跡が残っているのが見えた。






Aのことやから、もしかしたらネガティブな何かを抱えすぎてしまったのかもしれない。




無理矢理にでも会って話を聞いていれば、Aが一人で涙を流すことはなかったかもしれないのに。







A、ごめんな。






一人で泣かせてごめん。

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作者名:美夜 | 作成日時:2024年2月13日 0時

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