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ご飯を食べていると、突然私のスマホに電話がかかって来た。
確認すると、中学の頃から仲良くしている友人からだった。
『一旦席外すね』
「はーい」
廊下だと寒いから一度自分の部屋に戻って電話に出た。
『もしもし?』
《もしもし、A?元気?》
『うん、元気やで。どうしたん?突然』
《実はね、私、高校の頃から付き合ってる先輩と結婚することになったんだ!Aには一番に伝えたくて電話しちゃった!》
『え、?ほ、ほんまに?!おめでとう!こっちが嬉しいねんけど!』
《ありがとう!それでね、近いうちに結婚式を挙げるんだけど、私今北海道に住んでるんだ。だから式もここで挙げようと思ってて。でも、そうすると交通費とか時間とかが沢山かかっちゃって結構大変、だよね》
『いやいやいや、私絶対出席させて欲しい!意地でも行くから!』
《いいの?》
『当たり前やん!招待状絶対に送って!』
《絶対送る!本当にありがとう!》
『こちらこそ、そんな幸せなこと教えてくれてありがとう!それじゃ、また会おうね』
《うん!バイバイ!》
『バイバイ』
結婚、か。
羨ましいな。
私には絶対にできないこと。
叶わない夢。
一生を共にする幸せをみんなに祝ってもらえる特別な一日を、あの子は経験するんだ。
親友の幸せは心の底から嬉しい。
そして、羨ましい。
私は絶対にこの先一生翔ちゃんのことが好き。
だけど翔ちゃんもそうとは限らない。
もしかしたら新しい出会いがあるかもしれない。
もっと素敵な人と幸せになる未来があるのかもしれない。
これから先、一生を共にする人が隣にいればきっとそれだけで幸せなんだと思う。
現実と向き合う必要がある。
そうに決まってる。
翔ちゃんには、普通の幸せを手に入れて欲しい。
その幸せの中に、私はきっと必要ない。
翔ちゃんがこの世に生まれたあの日から、私は毎日幸せをもらってる。
十分すぎるくらい一緒にいる。
もう、翔ちゃんの隣は他の誰かに譲ろう。
これで最後にするから
だから
最後にあと一年だけ、この一年だけ、翔ちゃんの時間を私にください。
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作者名:美夜 | 作成日時:2024年2月13日 0時