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北ちゃん、どこに行ったの?
私、北ちゃんがいそうな場所なんてわかんないよ。
この四年間、外に出るときは必ず北ちゃんが一緒にいてくれたから。
だから、あなたが今落ち着く場所なんて知らない。
〔ピコンッ〕
通知が鳴って急いでアプリを開けば、それは彼からのメッセージだった。
〈今までありがとう。もうAのことは縛らないから、どうか幸せになってください。〉
『なに、、、それ、、』
何を言っているの?
私は北ちゃんがいなくちゃ幸せになんかなれない。
北ちゃんがいない人生に、幸せなんていらない。
早く見つけ出さなきゃ。
電話を掛けてみたけれど、もしかしたら出てくれないかもしれない。
いつもは5コール以内には出てくれる彼が、5ゴール以上鳴っても出てくれないなんて。
『ッ?!うそ、』
突然雨が降り出した。
探すのをもっと急ごうと駆け出した。
雨はどんどん激しくなる一方。
傘なんてないから、とりあえず上着のフードを被った。
今は北ちゃんを見つけることが最優先だ。
「A!」
一度電話を切ろうと立ち止まっていると、前方から声がした。
『え?樹くん?!な、なんでここに?』
樹「北人さんが今俺ん家にいるんだよ!突然来たと思ったら弱ってるし、絶対にAが必要だから!だからとりあえず着いてきて!」
『わ、わかった!』
声の主は、同僚の樹くんだった。
樹「これ使って!」
そう言って差し出されたのは、樹くんの傘だった。
『でも、樹くんが濡れちゃう』
樹「俺のことはいいから!Aが風邪引いたら怒られるの俺だから使って!ほら、行くよ!」
樹くんに手を引かれて、全力で走った。
彼は私と北ちゃんが恋人になったきっかけを作ってくれた、謂わば恋のキューピットというやつだ。
北ちゃんとも私とも仲が良くて、よく恋愛相談に乗ってもらっていた。
そう、元々は私の一目惚れから始まった恋なのだ。
結婚する前までは、樹くんと二人きりで会うことは許されていた。
それくらい北ちゃんは樹くんのことを信頼してる。
だから樹くんの家に行ったのだろう。
樹くんがいてくれてよかった。
北ちゃん、今行くからね。
たとえ拒絶されたとしても、無理やりにでも会うから。
お願い、どうか無事でいて。
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作者名:美夜 | 作成日時:2024年2月13日 0時