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お酒を飲みながら、いつものように愚痴を聞いてもらった。
人間関係がうまくいかないことや、
上司に仕事を押し付けられたこと。
嫌だと言えない自分が嫌いなこと。
沢山話しても嫌な顔一つせず相槌を打ってくれる彼の優しさに、泣きそうになる。
だけど、好きじゃないなら優しくしないで欲しい。
もうこれ以上、期待させないで。
「A?どうした?」
『、、なにがですか?』
「いや、寂しそうな顔しとるから。」
もうこの際気持ちを伝えてしまおうか。
振ってもらった方が吹っ切れるかもしれない。
『...私、彰吾さんが、、、、好き、なんです。だからもう、優しくしないで。これ以上好きになったら私、どう接したらいいのか、、わからなくなる』
好きで好きでたまらなくて、苦しくて、涙が止まらない。
引かれたかもしれないと思った。
けれど彼は、そんな私を強く抱きしめた。
「ごめん。気持ち伝えんくてごめん。俺、臆病やから告白なんてできんくて、それでAを悩ませてたなんて知らんかった。ほんまにごめん」
『嘘は、、いいです、、、』
「嘘やない。」
『...本当?』
「本当。慰めたいと思うのも、家に上げたいと思うのも、服を貸したいと思うのも、抱きしめたいと思うのも、全部Aにだけ。」
『そ、それってつまり』
「うん。A、付き合って欲しい。俺が全部受け止めるから、週末だけやなくていつでも話聞かせて欲しい。」
『グスッ、、は、、はい!』
目が合うと、どちらからともなく唇を重ね合わせた。
臆病な私が恋をしたのは、頼もしくて優しい、臆病な彼だった。
〜6年後〜
あの日から6年、私は辛くてたまらなかった会社を辞めた。
今は大好きな彼と小さなカフェを経営している。
いや、正確に言えば、昼間はカフェ、夜はバーだけれど。
〔カランカラン〕
『いらっしゃいま、あ!翔平さん!』
翔「Aさんこんにちは!」
「お、翔平やん!久しぶり」
翔「やましょーさん!お久しぶりです!」
彼は彰吾くんの知り合いの翔平くん。
彰吾くんと出会ったことで、辛かった毎日は楽しいものに変わった。
翔「桜花ちゃーん、翔平お兄ちゃんですぞ!」
『ふふっ(笑)』
彰「桜花〜、はよ出ておいで〜。翔平も待っとるよ」
大分膨らんだ私のお腹に話しかける翔平さんと、それを見てお腹を撫でながら微笑む彰吾さん。
そんな二人を見て、私も自然と笑顔になる。
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作者名:美夜 | 作成日時:2023年10月15日 22時