あなたが側に (ページ49)

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お風呂から上がってリビングに戻ると、メガネ姿の彰吾さんがキッチンに立っていた。

『あの、お風呂ありがとうございました』

「はーい。あ、ちょっと待っとって」

『あ、はい』

そう言ってどこかへ行ったかと思うと、ドライヤーを持って戻ってきた。

「そこ座って。」

言われた通り座布団に座ると、真後ろに座った彰吾さんは髪を乾かしてくれた。

凄く優しい手つきだから、だんだんと瞼が重たくなってきた。

＿＿

「A〜？ドライヤー終わったで。」

『ん、、しょ、ご、、さん、？』

「ふはっ、彰吾さんやで。おはよ(笑)」

『あれ？私、、』

「ドライヤー終わったのに動かんから見たら寝とった(笑)」

『え、あ、、ごめんなさい//』

いつの間にか寝ていたようで、寝顔を見られてしまった。

「酒飲む？」

『飲みたいです』

「持ってくるからソファー座ってて」

『ありがとうございます』

彰吾さんがお酒を持ってきてくれて、いつも通り乾杯をした。

彼の優しい表情を見ていたら、今日あった嫌なことなんて吹き飛んでしまう。

「A、おいで」

お酒を一口飲んだ後、そう言って両手を広げる彰吾さんの胸に飛び込んだ。

私が週末にどうしても彼のバーに行きたい理由は、まさにこれ。

いつもはお客さんが誰もいなくなった後に抱きしめてくれる。

「今週も、お疲れ様でした。」

『、うん』

そして、一週間の私の頑張りを誰よりも褒めてくれる。

仕事の辛さを誰にも相談できずにいたあの日、なんとなく入ったバーのオーナーが彰吾さんだった。

辛さを吐き出したくて相談したら、彰吾さんは私を沢山褒めてくれた。

俺がいるから。と言ってくれた。

その日から毎週、私はバーに通うようになった。

涙が止まらなかったある日から私を抱きしめてくれるようにもなった。

そして、次第に彼に惹かれていった。

だけどきっと彰吾さんは、私のことなんて好きじゃない。

だからずっと気持ちに蓋をしてきたけど、
彰吾さんの匂いがする服を着て、おまけに抱きしめられてしまえばこれ以上は誤魔化せない。

さっき、私を家に入れてくれると言ったとき、

いいんですか？と聞いた私に彰吾さんは

"Aやしな"

と言った。

その言葉が本当に嬉しかった。

でもきっとそれは、私が何もしない人間だと思われているから。

そう思うと、少し悲しくなった。