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価値を自分で作る、か。



そんなこと今まで思いつかなかった。



私は医者になって初めて価値のある人間になれるのだとばかり思っていたから。


両親にもそう言われながら育ったわけだし。


だけど陸くんは"ただの私"を見てくれている気がする。





『陸くん』




「ん?」



『陸くんから見た私は、どんな人間ですか?』



「どんな人間、、、」



少し間を空けてから、目を合わせて話し始めてくれた。




「話を聞いていく中でそんな感じがするって思っただけだけど、何かに本気になれて、真剣に未来を考えることができて、現実を受け止める強さを持ってる人、かな。かっこいいと思う。」




『そんな風に言ってくれてありがとうございます』



「本心だからね。」


私は逃げ出しただけなのにそれを強さだと言ってくれた。


かっこいいと言ってくれた。



沢山の優しさと安心感をくれる陸くんになら自分を曝け出せるようになれるかもしれないと、なぜかそう思った。



そして、気づいたら陸くんがいる未来を想像していた。




帰りたくないな。



ずっとここにいたい。




もうバイトもしたく無い。



あの数十分の出来事のせいで人と接触するのが怖くなった。



だけど働かなくちゃ生きて行けない。



私は結局、どんな言葉を貰っても逃げるという選択肢が思い浮かぶんだ。



正直、ダサいなって思う。





「...?」



最後に関わった人が陸くんでよかった。



外は明るい。



きっとあの時間帯に外にいたのだから陸くんも夜勤明けかなにかなんだろうな。





優しい陸くんに心配をかけずに帰れる時間帯の今、陸くんと離れよう。




「ねえ、今何考えてるの?」


『え、?』


唐突に聞かれたその質問に思わず動揺した。



あまりにも真剣な声で話すから、心の内を見透かされているような気がした。


「辛そうな目してる。どうしたの?」



『えっと...バ、バイト!バイトやめようかなって。でもそんなことしたら生活できなくなるし、どうしようって。』



「そっか。...あ!ならさ、ここで住み込みで働かない?」



『は、働くって、どんな仕事を?』



「うーん、、、家政婦さん的な?」



『家政婦さん?』




「うん。あ、嫌だったら全然断ってもらっていいんだけどね。ただ、もし働くなら衣食住は保証するし、人とむやみやたらに関わらなくていいし、どう?」



『...働きたい、、です』




「なら決まり!」

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作者名:美夜 | 作成日時:2023年10月15日 22時

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