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「やっぱり、、、」
『、?』
「なんとなくそんな感じはしたんだけどまさか本当にそうだったなんて、、。ごめん、怖かったよね」
『ぜ、全然大丈夫です。陸くんに話したら少し楽になりました。』
「そっか。」
でもやっぱり、話すことによってあれは現実だったのだと実感してしまって震えが止まらない。
温もりが欲しい。
抱きしめて欲しいって言ったら、嫌がられるかな。
嫌がられるよね、きっと。
「Aちゃん?」
『はい、?』
「大丈夫、、なわけないか。震えちゃってるね。怖かったね。ごめん、思い出させて。俺にできることがあればなんでもするからなんでも言ってね。」
なんでも?
なら、お願いしてみようかな。
『、、、、その、、嫌だったら全然、大丈夫なんですけど』
「うん」
『だ、、抱きしめて、もらえませんか?』
「いいよ。俺でよければいくらでも。」
そう言って私を包み込んでくれる陸くんの体温に安心して、ついつい涙が溢れてしまった。
そしてまた、止まってくれない。
「大丈夫、大丈夫。俺がいるからね。大丈夫だよ。」
『ッ、、グスッ、怖かった、、気持ち悪い、、ッ、、なん、で、あんなこと、、、グスッ、、私、、悪いこと、、したの、?』
「してない。してないよ。Aちゃんは何も悪くないから。大丈夫。」
陸くんは何度も何度も、私に"大丈夫"と言ってくれた。
その声が心地よくてだんだんと瞼が重くなって来た。
もう目が開かない。
「安心して寝ていいよ。おやすみ」
その心地よい一言を最後に、意識を手放した。
__
"あなたも医者になるわよね?"
"先生、この子は医者になるんです!"
"医者になるならこれくらいの問題に躓くんじゃないよ"
"テストで98点?100点じゃなくちゃ意味がないでしょう?あなたは医者になるんだから"
苦しい。
私に完璧を求めないで。
頑張りを認めてよ。
どうして結果しか見てくれないの?
もう期待しないで。
__
『ッ、?!夢、、か』
目を覚ますと、辺りは真っ暗。
さっきまでの温もりがなくて途端に不安に襲われた。
夢の中の両親からの言葉たちと
男性客から触れられたあの気持ち悪い感覚が蘇ってきて
気づいたときには体が勝手に動いていた。
なぜかカーテンと窓を開けていて
なぜか外を見下ろしていた。
そして、空は少し曇っていた。
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作者名:美夜 | 作成日時:2023年10月15日 22時