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数分後、彼はリビングに戻って来た。
「お待たせ〜。」
『あ、あの、顔、手当してくれてありがとうございます』
「ごめん、勝手に触っちゃったけど嫌じゃなかった?」
『全然嫌じゃないです。』
「そっか。ならよかった。まだ痛む?」
『少しだけ。でももう大丈夫です。』
「そっか」
『あの、』
「ん?」
『私、何を割ってしまったんでしょうか』
「ただの花瓶だよ。百均で売ってる安物だから気にしないで?」
『本当にごめんなさい。片付けまでさせてしまって』
「気にしないでって言ってるでしょ(笑)そんな悲しそうな顔しないで。大丈夫だから。
それに、使わないからそろそろ処分しよう思ってたところだし丁度よかったんだよ。
それよりもどうしてああなったのか教えてほしいんだけどさ、話せそう?」
『、はい』
「ありがとう。あ、ちょっとまって!」
『、?』
「自己紹介してなかったね!俺、青山陸です!」
『あ、私は桜田Aです。』
「Aちゃんって呼んでいい?」
『はい、大丈夫です』
「ありがと!じゃあ、俺のことは陸って呼んで」
『陸さん』
「さん付けはやだな〜」
『え?じ、じゃあ、陸様?』
「なんでそうなるの!(笑)呼び捨てとかさ、せめて君付けとかじゃない?ね、呼んでみて!」
『陸、くん』
「そう!ありがと、Aちゃん!」
『そんなに嬉しいですか?』
「うん!」
『それならよかったです』
不思議な人だなぁ。
今まで出会ったことのないタイプの人。
どうして怒らないんだろう。
初対面だから?
だとしても優しすぎる。
もしかして、油断させて後から何かする、とか?
いやでも、そんな人だとは思えない。
ていうか、さっきおんぶしてくれた人と同じ声。
この人のことは信じてみてもいい気がする。
賭けてみようかな。
「じゃあ、話戻るね。何があったのか、ゆっくりでいいから、話せる範囲でいいから、教えて?」
『はい。』
まだ恐怖は残ってるけど、だからこそ気持ちを誰かに知って欲しくてさっきのことを全て話した。
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作者名:美夜 | 作成日時:2023年10月15日 22時