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最愛の人 RIKU ページ28

大学2年生の春



私は学校を中退した。





私の親戚には医者が2人もいて、当たり前のようにその親戚たちは尊敬の眼差しを向けられる。


そしてそのご両親も。



両親は私も医者になるようにと言い聞かせた。


両親の自慢のために医者になるのは正直嫌だったけど、医者である親戚はかっこよくて憧れで、目標だった。




いや、無理やり目標にしていただけなのかもしれない。



中学校、高校での三者面談で進路について聞かれると、真っ先に答えたのはいつも親だった。




"この子は幼い頃から医者になりたいと言っているんです"
と。




親が嬉しそうに話すものだから、私は頷くしかなかった。




直接反抗することもできなかった私は、弱虫なんだと思う。




なんとか大学に合格したはいいものの、周りを見渡してみればみんな本気の眼差しだった。




私だけが、本気になれていなかった。



生半可な気持ちで医者を目指していいはずがない。


人の命を預かる仕事に本気で向き合えない人間など医療の世界にはいらない。




そう強く思い始めて、すぐに大学を辞めた。




両親に謝るために実家に戻れば

誰のおかげで入学できたと思っているんだと怒鳴られ、

一家の恥だと罵られ、

お前はこの家に要らないと言われ、

終いには縁を切るとまで言われた。



そして、本当に縁を切った。



学校に通うために借りていたアパートの家賃は
元々半分だけ親が負担してくれていた。


だけど縁を切ったから、当たり前だけど全額私の負担になった。






ギリギリの生活の中でなんとか生きるために時給がいい深夜のコンビニバイトを始めた。




それが、いけなかったんだと思う。



いつものように仕事が終わって帰ろうとしたタイミングで来た男性客3人に店の裏に連れて行かれ、そのまま襲われた。




人通りの少ない場所にあるコンビニの裏なんだから人なんて来るはずもなく、助けを求めることも叶わなかった。



好き勝手されて、抵抗しようとすれば押さえつけられて、叫ぼうとすれば殴られた。




最終的に私は気絶して、ほとんど何も着ていない状態で店の裏に倒れていた。




「、、?、、あれ?、、おーい、大丈夫?」


誰かの声が聞こえて目を開けると、私と同世代ぐらいの人が目の前にしゃがんでいた。



なんとか首を横に振ると


「おんぶするから掴まって」



そう言ってくれた。




広くて温かな背中に安心して流れた涙は、止まることを知らずに彼の肩を濡らし続けた。

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作者名:美夜 | 作成日時:2023年10月15日 22時

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