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あてもなく歩いて行き着いた先は、昔よく来た公園やった。




ベンチ以外には何もない、子供が集まらない公園。




この寒空の下、思い出に包まれて眠るのも悪くない。



人目につかない茂みの裏に隠れて、私とショルダーバッグを抱きしめて目を閉じた。




後のことなんてどうでもいい。



今はただ、思い出の中の幸せに浸っていたかった。



もう二度と感じることはない翔ちゃんの温もりがこんなにも愛おしい。



私には暖ちゃんがおる。



翔ちゃんが私のことを考えながら選んでくれた、
思い出を一緒に重ねてきた暖ちゃんがおるから、
だから何も怖くない。



もしも翔ちゃんと友達として出会っていたら、翔ちゃんと結ばれる可能性もあったかな。



気持ちを伝えるチャンスくらいあったかな。



『暖ちゃん、今日は寒いねぇ。ッ、、』


頬が濡れた感覚がして確認すれば、それは涙だった。


一度流れ出したそれは、止まることを知らない。


もう誰も、

慰めてはくれない。

抱きしめてはくれない。



最後にもう一度、翔ちゃんの笑顔を見たかった。


あの温もりを手放したくなかった。



翔ちゃんは優しいから、今頃寂しがってるかもしれない。



こんな私のこと、心配してくれてるかもしれない。


『翔ちゃん、ごめんね』




翔「何に対してのごめんなん?」




ああ、もうだめだ。



とうとう幻聴まで聞こえるようになったみたい。




『翔、、ちゃん。...大、、、、好、、き、』



翔「、、ちゃん?、、、Aちゃ、!、」



最後に翔ちゃんの声が聞けて、幸せものだなぁ。私。


__

翔吾side


公園に入るなり、まず最初に目に入ったのは茂み。



あそこは、泣き顔を見られたくないとAちゃんがよく隠れてた場所。




少しずつ距離を縮めて行くと、
見覚えのあるマフラーが見えた。



そして、Aちゃんはそこにいた。



『翔ちゃん、ごめんね』



話しかけようとしたそのとき、そんな言葉が聞こえた。



翔「何に対してのごめんなん?」


思わず出て来た言葉に反応して、あの優しい笑顔でこっちを見てくれた。



『翔、、ちゃん。...大、、、、好、、き、』



そう言うなり俺から視線を逸らして、瞼を閉じて、そのまま横に倒れた。



翔「Aちゃん?Aちゃん!Aちゃん!」


咄嗟に支えたから頭はぶつけなかったけど、とにかく体が熱い。


名前を呼んでも返事がない。


とにかく家に帰らな。

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作者名:美夜 | 作成日時:2023年10月15日 22時

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