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煙草を吸うためにベランダに出た。
凄く凄く、寂しくなったから。
健太との思い出が詰まったこの部屋は、私のせいで変わってしまった。
煙草は置いてあるし、空のお酒の缶が何本も机に散らかってる。
ただ、唯一何も変わっていないのは健太との写真が飾ってある棚と健太の部屋。
何度も片付けようとしたのに、結局できなかった。
私が室内で煙草を吸わない理由。
それは、健太の匂いが消えてしまう気がするから。
もう残っていないのかもしれない。
けど、煙草の匂いに変えることだけは絶対にしたくないの。
ベランダの戸を閉めて煙草に火をつけようとしたときだった。
〔ﾋﾟﾝﾎﾟｰﾝ〕
久しぶりにインターホンが鳴り響いた。
『はーい』
急いで玄関の戸を開けたとき、
「久しぶり。元気してた？」
そこには健太がいた。
『....健太？ど、どうしてここにいるの？』
「ちょっと話があって。ねえ、入ってもいい？」
『あ、いや...』
どうしよう。
いきなりのことで頭が混乱してる。
机の上はお酒の缶で散らかってるし煙草も置いてあるし、とても見せられるような状態じゃない。
「どうしたの？」
『えっ、、、と、、あの、ここで話すのは嫌？』
「できればちゃんと話したい」
だよね。
そうなるよね。
どうしよう。
『あ、あの！駅前のカフェとか、どう？』
「あ、もしかして彼氏さんとかいる？」
『いないよ。』
健太、私が健太以外の人を好きになれないことぐらい知ってるでしょ？
「...ねえ、何か隠してる？」
『そんなわけないじゃん(笑)ほら、カフェ行こ？』
「ごめん、勝手に入るわ」
『あ、ちょ、健太！』
嘘でも彼氏いるって言えばよかったかな。
最悪だ。
汚れた部屋を見られちゃう。
私がどんな生活をしてるのか知られちゃう。
嫌だ。
嫌われたくない。
引かれたくない。
引き止めなきゃ。
『け、健太！だめ！入らないで！』
「...なに、、これ。A、何があったの？」
遅かった。
部屋の中、見られちゃった。
嫌われちゃった。
もうだめだ。
諦めるしかないや。
ごめんね、健太。
勝手に待っててごめん。
部屋を汚してごめん。
「A。」
『わっ』
ただ立ち尽くしていたとき、健太が強く抱きしめて来た。
優しく名前を呼んで来た。
涙が次から次へと流れてきて止まらない。
どうして優しくするの？
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作者名：美夜 | 作成日時：2023年10月15日 22時
