検索窓
今日:22 hit、昨日:29 hit、合計:22,663 hit

深海 Kenta.k ページ1

「深海魚ってね、深海にいるときと陸にいるときとじゃ形が違うらしいよ。」



『え、そうなの?なんで?』



「なんかね、水圧の差が大きいからなんだって。」



『でもマグロの形は変わらないよ?』



「いや、だってマグロは深海にいないでしょ(笑)深海は水圧が強いから...あ、缶コーヒーあるでしょ?あれを深海に持っていくとグシャって潰れちゃうの。」



『じゃあなんで深海魚は深海でも平気なの?』



「確か海水と体内の圧力が同じだとかなんとか。詳しいことは忘れちゃった(笑)まあ、簡単に言うと深海に適してるんだよ」

 

『あ、最後面倒くさくなったでしょ!(笑)』



「本当にわかんないの!(笑)」



『本当かなぁ(笑)ねえ、海の話してたら水族館行きたくなって来た!今年の夏も一緒に行こ!』



「いいよ。行こ(笑)」



『やった!楽しみだなぁ。』

________________________

なんて言葉を交わしたのが3年前の春。


健太、もう夏だよ?


水族館、行くんじゃないの?


どこへ行ったの?


いくら探しても見つからない。


連絡先だって無くなってた。



でも、別れてはいないよね?



3年前の春、どうして手紙だけ置いて消えたの?


〈今までありがとう。
水族館、行けなくてごめんね?
今までで1番幸せで大切な恋愛だった。
ありがとう。
ずっとずっと愛してる。〉


なんて書かれてた。



あの日、もし仕事が入っていなければ会えた?


私の側にいて欲しいって、言えた?




健太のいない人生は酷くつまらないもので、世界から色が消えたような虚しさだけが残ってる。




ねえ健太、帰って来てよ。



なんで何も教えてくれないの。



私たち恋人同士じゃん。



まだそうでしょ?



私だって健太をずっとずっと愛してる。


帰ってくるのをずっと待ってる。



私はどうしたらいい?



あとどれくらい私を放置するの?


私、変わっちゃったよ?


健太が消えて半年経ってからかな。


寂しさを忘れたくていつもは健太と乾杯する一缶だけだったお酒を毎日5缶以上飲むようになった。




好きじゃなかった煙草だって吸うようになった。



当時の私にはこれくらいしか縋れるものがなくて、そのまま今もやめられずにいるの。



私じゃない誰かが隣にいる夢なんて数えきれないほど見た。


毎日、寂しくて苦しいんだよ。


このままずっと会えないのなら、これっぽっちも適していない深海にでも沈んで潰されてしまいたい。

・→



目次へ作品を作る
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (23 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
113人がお気に入り
設定タグ:THERAMPAGE , 短編集
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:美夜 | 作成日時:2023年10月15日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。