25.胸の鼓動 ページ28
・
櫻井「ここか？」
「はい、もう大丈夫ですから」
櫻井「…まて」
「わっ、ちょっと」
あとは中に入るだけと、櫻井さんに伝えたけれどまた腕を掴まれて抱きしめられる。
さっきから予想もしない事ばかりで私の心臓の音が凄く響いて体中が熱い。
我に返った櫻井さんが、家のインターホンを押し家族を呼んでくれた。
インターホン越しからは、お兄ちゃんの声がしたんだ。
「お兄ちゃん」
櫻井「…今から来てくれるって」
「…うん」
櫻井「……。」
数秒して、扉の向こうから激しく開ける音に驚いた私達。
そこには私のお兄ちゃんがいて、
私の事をみつけると物凄い勢いでかけつけてきた。
「お、お兄ちゃ」
冬斗「A！熱って！大丈夫かよ？！」
「だ、だい 櫻井「落ち着いて下さい」」
冬斗「その声は、さっきの」
櫻井「彼女の事、よろしくお願いします。熱が悪化してるんです」
冬斗「お、おう。」
私を支えていた櫻井さんはお兄ちゃんに変わり、そっと腕を離した。
今でも倒れ込みそうな体をお兄ちゃんがしっかり抱え込む。
まあ、用は「お姫様だっこ」状態だった。
「お兄ちゃん、何して」
冬斗「もう、無理すんなバカ」
「ば、バカって何よ！」
冬斗「ったく。ほんと、ご迷惑かけてすみません」
櫻井「いえ。何もしてないので。では、失礼しました」
冬斗「ありがとう」
「あのっ」
櫻井「え…？」 冬斗「A…？」
「本当に、ありがとうございました」
櫻井「…お大事に」 「はいっ」
ここまでしてくれて、何もしないなんて失礼以外の何者でもない。
力つきても、熱が悪化しても。
それでも私は。お礼を言いたかった。
櫻井さんがいなくなるのを確認しながら
お兄ちゃんに抱かれ安心し意識が飛んでいくのが分かった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 70人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あからい | 作成日時：2019年1月10日 18時
