不思議の国の５色の虹【ars】 (ページ9)

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「はい。珈琲ですが…」
「ありがとうございます」

……前の現場でいきなり『ティータイムの時間です』と言い、適当な場所にセッティングをして紅茶を味わっていた彼
てっきり珈琲は駄目かと思っていたが、そうでもないらしい
しかもブラック

「あのー…」
「はい、何ですか？」

青砥さんがカップを持ったまま伺うように聞いてくる

「お二人は、どういったご関係なんですか？」

そう言われ思わず影山さんの方に目を向けた
すると彼も丁度こちらを向いた様で、自然と目が会ってしまった

コンマ数秒だったと思う
すぐに彼から視線を外し、青砥さんの質問に答えた

「通りすがりのミステリー好きのただの執事が僕に話しかけてきたので現場にご一緒した関係です」
「いや怪しいですよそれ」

影山さんは我関せずといったていで、珈琲を飲んでいる
…それにしても優雅ですね

青砥さんは怪しいと言っていますが、現に彼の助言で事件は解決したんですから…
あの時は犯人が逮捕された段階で、「もうこんな時間ですか」と言い、その場の人間に卒無く挨拶をし帰っていった

「で、今日はどうしたんですか？」

青砥さんの事はこの際無視して、影山さんに問う
執事といったら主人の住む家の中でも重要な位置だ
それがこんな世間一般ではおやつ時にウロウロしていていいものなのだろうか？
…そういえばティータイムはどうしたんだろう？

「あぁ。本日はお嬢様より使いに行ってこいとのご命令でしたので。その場所は細い道が多く、車では通れないと考え徒歩にて行ってきた次第です」
「え…じゃあ早く帰って報告しないといけないんじゃないですか？」

青砥さんの素朴な疑問に対する彼の返答はこうだ

「お嬢様には友人に出会ったので遅くなる、と。先程メールではありますが報告致しました」

いつの間に…と思っていると、ジャケットの内ポケットからスマホを取り出し操作し出した
そしてある文面を見せてくれた

『まぁお友達に出会ったのなら仕方ないわね。今回は大目に見てあげる。それにしても、貴方に友達なんていたのね。驚きだわ』

「……という次第ですので」
「はぁ…」

それにしても、僕はいつから彼の友になったのだろう
たった一回会って、事件現場に一緒に居ただけだ