不思議の国の５色の虹【ars】 (ページ14)

今日:12 hit、昨日:1 hit、合計:59,685 hit

2 ページ14

:

櫻井翔

それが彼の名だ
そんな名前で本名だってんだから初めは驚いた

彼を認識したのは中学二年の夏休み明け
俺のいたクラスに転校してきた時だ

まぁ名前負けしていない整った顔をしていて、どっちかと言うと女顔
俺も自分で言うのも何だけど、
彼とはタイプの違う整った女顔部類ではあったから少しは同情したよ

この顔のおかげで言い寄ってくる奴なんて後を絶たない
女も、男も

面倒だからのらりくらりと交わしてきた
大体少し相手を見ただけでソイツの性格は分かる
他人が煩わしいからこそ、人間観察には長けていた

だから、まぁこれも面倒だけど後後の事を考えるとその場だけだと割り切り、ソイツに合った『断り方』をしてきた

……それにしても
あの、櫻井翔とか言う男。妙に気になる
今は爽やかな笑顔で自己紹介なんてやってるけど…なんというか……

「じゃあ櫻井の席は、と。二宮の隣な」

思考の波の中から担任の声が聞こえた
俺の席は窓際の一番後ろ
その隣は確かに今は空席だから、まぁ妥当か

…ったく、めんどくさい
転校生ってだけでも目立つのに、加えてあの顔
おそらく性格からして品行方正や才色兼備なんていう言葉が似合う奴だろう

俺とは真反対の人生を生きている人間

そう、思ってた―――

:

「翔ちゃーん！」

購買でパンと飲み物買って屋上へ
うちの学校は屋上立ち入り禁止だけど、
俺にかかればこのくらいの鍵簡単に開けられる
それは彼にも言える事

「叫ばなくても聞こえてるって。あとその呼び方やっぱなんとかならないの？」

「俺の方がお兄さんだから無理ですねー」

そう言いながらもう自分の弁当を食べ始めている彼の正面に座る

「そして何度も言うけど何でそこ？」

「翔ちゃんの顔見たいから☆」

「……はぁ」