不思議の国の５色の虹【ars】 (ページ2)

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鍵とディナーの出会い (榎本×影山) ページ2

その二人の邂逅は何を生むのか

「何をしているんですか」

青砥にまたしても呼ばれた
『密室』という言葉についつい反応した榎本は現場となっているある一軒家に赴いた

そこで奇妙な人物を見かけた

燕尾服に身を包んだ人物が近所の住人に聴き込み……をしている
本来それは警察がやる事であって、一般人(というのも怪しいが)であるその人物がしているのはおかしい

普段の榎本なら声などかけなかっただろう
だが何故か気になってしまった
それは事件に関係している、というものではなく
何処か本能に近い様な……

「え？あぁ、お気になさらず。私、執事の影山と申します」
「執事…？」
「えぇ。通りすがりのミステリーが好きなただの執事です」
「充分怪しいですね…」

笑顔を絶やさない影山に無表情な榎本
傍から見ればどちらも怪しい対象だ

「ところで……ここの殺人事件の捜査の関係者の方ですか？」
「……何故そうと？」

相変わらず笑顔を絶やさず影山は答える

「ここであったのは密室殺人だとか。お見受けしますに貴方様がお持ちになっているのはセキュリティ関係の工具。加えて先程現場の家を見ていらっしゃいました。ですからそう思った迄です」

この対峙の中で、しかも榎本がここに着いてから見られていた
ますます何者なのかと疑うのが普通の人間としては当然だろう

だが、榎本は生憎と『普通』ではなかった

「素晴らしい観察眼ですね」
「いえ、私などまだまだ」
「で、影山さんはここの事件に興味があると？」

そこで影山の目の色が変わった

実はこの事件は宝生麗子とは関係がないのだ
では何故ここで捜査まがいの事をやっているのかと言うと、本日は麗子は非番
屋敷の用事をこなし、ちょっとした散歩の途中に遭遇した、という訳である

彼の好奇心が疼きいつもの癖で調べていた、という複雑なのかそうでないのか分かりにくい展開である

「まぁ……興味がないと言うと嘘になりますが」
「………来ます？」
「なんと？！宜しいのですか？！」

今迄の笑顔とは違う、本当に嬉しそうな顔を見て、榎本の口角も知らぬうちに上がった

「行きますか。あぁ、僕は榎本といいます」
「よろしくお願い致します、榎本様」

こうして二人は出会った