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飲みの席であの時の話になると
雅紀は「勘弁してよー」と智くんや潤に助けを求めて
潤は「俺に何を言えってんだよ」ってバツが悪そうにして
智くんは「あれだよねー。若気の至り？」って
ちょっと違うんじゃない？って感じで
あの時も、今までも
雅紀や潤だけのせいなんて思ってない
そりゃあ俺だってそんなに出来た人間じゃないからさ
恨み言の一つや二つ、あると言えばある
けどさ、そういうの含めて
こうして歩んできた道があるんだ
、
二人にタクシーに押し込められて
呆気に取られている間に、
松潤が俺のマンションの住所を運転手に告げる
それに漸く反応しようとした時は
もう発進して
距離的には俺ん家の方が確かに近い
俺が先に降りて、ニノはそのまま帰ればいいと思ったから
自宅に着いて、料金払って
「じゃ、おやすみ」
タクシーから降りてそう声をかけると
素早くニノも降りてきたから驚いた
さっきもそうだったけど
咄嗟の事に弱い俺は反応が遅れてしまって
その間にタクシーは去って行って…
「おい、ニノっ」
「目立ちますよ」
そう言ってスタスタとマンションへ向かう
しょうがない、と思って
その後を追い、ポケットから鍵を出すと
「え？」
自動ドアが当たり前に開いて
当たり前に中に入って行く彼
俺のマヌケな声に振り向き
腕を取られて、引っ張られる
「閉まるでしょ」
「あ…そう、だな、…」
すぐに手は離れたけど
なんつーか……自然過ぎて……
心無しか早足で歩くニノについて行く形になって
その間にも
サッサとエントランスを抜けて、エレベーターに乗って、俺の自宅階のボタンを押して
その行動が自然過ぎて
エレベーターが動いている間の沈黙が
居心地が悪い様で
でも、懐かしく思えて…
自宅階に着くと
またスタスタと歩き出して部屋の前まで来て
…それ迄のスムーズさが嘘みたいに、ピタッと止まった
少しだけ遅れて追いかけていた俺の方を向き
眉を少し下げ、目を少し細めて見つめてくる
その間に追い付いた俺は
帰った時と同じ様にドアを開けて
「珈琲、飲んでく？」
振り返ってそう言えば
「胃の労り期間なんで、ミルク多めで」
まるで猫みたいに
素早く。俺より先に入っていくんだから
「……感謝、かな」
中に入り
ゆっくり閉まるドアをそのままに
その、少し丸まった猫背を追いかけた
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作者名：櫻華
| 作成日時：2018年10月12日 23時
