＿＿31 ページ31
:
それまで黙っていた俺の言葉に視線が集まる
きっと、翔さんは俺が何を言うのか…
分かってるんじゃないかと思う
けど、翔さんが言う言わないにしても
俺が最初の一言を言おう、と…
それは自己犠牲では無く
俺の中にある、本音だ
「あの時、言いませんでしたけどね。正直、言い返したかったですよ」
「ちょ、ニノっ」
「この際ですよ。この二人は言ったんですから、私達がぶつけない義理はありません」
少し固く強めに言うと、翔さんは黙った
そして「そう、かも…な」と
それに対して、目の前の二人はまた緊張感を増した
俺もそこまでお人好しでも物分りがいい方でも無いんでね
言わせてもらいますよ
「ハッキリ言って貴方達、私達に言う気無かったでしょ。それを『何で気付いてくれないんだ』なんて、無理難題にも程があるでしょ。アピールされて、なら少しは気付く要素になったかもしれないですがね。それさえも『友情』という盾を武器にして、隠れてたんじゃないんですか？」
「……的確過ぎて怖いわ。ニノはやっぱ」
「貴方達の言葉を繋ぎ合わせれば分かってきますよ。こうなったら私も隠さず言いますがね。家の中、かなり未練あり過ぎなんですよ」
「え……」
この言葉に反応したのは翔さんで
その反応で、なんとなく
翔さんも俺と同じなんじゃないかと、思った
「二ノ…。今の…」
「大体。お互い、合鍵返してないでしょーよ。その時点で未練タラタラだわ」
俺の言葉に翔さんは少し俯いて
見せてきたもの
それは、
携帯の写真フォルダの中に、更に分類されているフォルダ
「……消せなかった、これ。何度も消そうとして、でも出来なかった。…智くんには『後悔はしてない』って言ったけど。これを消せない時点で、後悔してるわな」
そこには
俺と翔さんの、何気無い生活の中の一部
ツーショットで笑っているもの
これ、三人に…
てか他の奴に見せるの、初めてのばかりじゃないのよ
それは、俺のフォルダにも入っているもので
当然、俺も消してない……消せなかったもので……
:
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 435人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：櫻華
| 作成日時：2018年10月12日 23時
