セカイの何処かにキミが居る【凪のあすから】 (ページ8)

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ありがとうとごめんねとページ8

「まなかからの呼ばれ方ありがとう！さっきの！」
「へ？」

体育の授業を控えていて、更衣室で着替えを済ませるAたち。悪目立ち防止としてちさきのジャージを借りたまなかが、突然にAの腕を掴んだ。

「あんなに圧のあるまなかからの呼ばれ方、初めて見た！守ってくれたんだよね、みんなのこと」
「………あはは、守ったってつもりはないよ。ああそれより圧を感じたってさ、まなかちょっとAのこと怖がってるでしょ〜？」
「ひぃっ、ほっへつかみゃないで」
「あ、まなかのほっぺた柔らかいね」

戯れるまなかとAを見て、ちさきが目を細める。

「あんなAは初めてだったと思うよ」
「うん！うん！うん！初めてでちょっとびっくりしたけど、けどね、それにね、嬉しかったの！私も魚臭いの好きだもん」
「……うん、Aも魚臭いの大好き。あと、まなか、Aよりも光の方が特にみんなのこと守りたくて、強気になっちゃったんだよね。悪いのは光だし、喧嘩してもいいけど、それだけ解ってはあげてほしいな」
「……そう、光はまなかのこと守らなきゃって思ってるから」

ちさきの手がまなかの頭を撫でた。

「うん……ひぃくんにごめんねって言わなきゃ、だよね」
「まなかは悪いことしてないでしょ？その代わり、光が謝ってきたらきちんと許してあげて」
「うん……！」

Aの目に映る幼馴染の二人の光景は姉妹のように仲睦まじい。Aが幸福感に包まれていると、校庭の方から笛の音が鳴り響いていた。導かれるように窓際のカーテンを開けると、そこには同じクラスの男子生徒達が校庭を走る授業風景があった。

「あの人……」
「あ、速いね」
「陸の上を泳いでるみたい………」

先頭を走る少年を見たまなかの眼差しが輝く。

「あ、光だ」

その少年の背中を追う光を見つけてちさきが呟いた。同じクラスの男子生徒達の授業なのだから「そりゃあ要たち居るよなあ」とAが目を向けてみれば、なにやら光と少年が衝突したらしく、二人仲良く土にまみれて転んでいた。

「あーらら………」

後方で走っていた要が肩を竦めてこちらを見ている。「今のうちだよっ抜かしちゃえっ！」とAが叫んでみれば、応じて要が先頭へと抜け出した。余裕げに手を振る要にAも歓声を返す。Aの名前を呼ぶ光の怒号が校庭に響いていた。