セカイの何処かにキミが居る【凪のあすから】 (ページ6)

今日:3 hit、昨日:16 hit、合計:3,533 hit

敵対ページ6

◇

「えー………波路中学が廃校になってね、うちの美濱中学と統合されることになったんだけど………」

海の下で薄暗い波路中学とは打って変わって、Aたち一行が居るのは太陽の光が入り込む美濱中学だ。暖かみを感じる色合いの教室はAの目にとても眩しく映る。

「まあ皆、仲良くできるよねぇ」

黒板の前に、廊下側からちさき、要、光、まなか、そしてAの順番で並ぶ。注目される中で、様々な意図を持つのであろう視線を受けて、Aは居心地が悪そうに身を捩った。

「ひ、比良平ちさきです……！地上の生活に早く慣れることが出来たらいいなって思ってます。よろしくお願いします」

ぺこりと頭を下げるちさき。

「伊佐木要です。どうも」

そんなちさきに続くように隣の要が軽く手を振る。

「………っはは」
「………？」

不意に、教室からは何処からかも分からないひとつの笑い声が生まれた。そして、Aたちが不思議そうに首を傾げていると、その反応を見てか嘲笑うような笑い声は次第に増え始めていく。

「なんか魚臭くねー！」
「やっぱ海のヤツ、だせぇよなあ？」

「………ひどい」

罵倒が空を翔ける品の無い光景に、Aは吐き気を催す。口元に手を添えて下を向くAに、光が一瞬だけ目を向けた。

「…………あーあ、くせぇくせぇ！」

先陣を切った光の声に、教室中の視線がまとわりつく。それに光は臆することもなく、ただ嘲るような笑みを大衆に、堂々と、派手に見せつけたのだ。

「先島光。地上のヤツらは豚臭いっすねぇー！よろしくプギーっ！！」
「光！？」
「ひぃくん！？」

豚の足を模した指の動きをクラスメイトに向ける光。目の前の彼らの先程の言葉たちと同じ、差別を意図するそれを光の隣のまなかが咎める。しかし光は動きを止めるどころか、まなかにも、己の時の自己紹介のように彼らに"かましてやれ"と静かに告げる。

「か、かますって……！」

今朝まなかを釣った窓際の少年にまなかは目を向けて、想像して、それから顔は赤く染まった。

「で、出来ないよそんなの！」
「やれって言うの！」
「い、痛い痛い、A関係ないのに巻き込まれてるって」

「ちょっと光……！」

まなかの肩を掴んで揺らす光に、困るまなか。ついでにまなかの背中に圧迫されてもがくA。Aを庇うかたちでちさきが介入した。

「もうひぃくんとはおしゃべりしないよ！」
「上等！」