運命 ページ4
「う〜〜〜〜〜〜っ!地上!眩しい!」
「餓鬼かよ」
「餓鬼だよ!」
海から地上に続く階段を上り、Aは興奮したように飛び跳ねていた。
「…………あっ」
……興奮しすぎたあまり、足を滑らせて海に落ちてさえいる。傍に居た要が落ちたAにすぐ手を差し伸べた。
「大丈夫?A」
「………うん、大丈夫!」
「………手、触れてないけど」
「要、あと太陽が!眩しすぎて何も見えな〜い!」
直射日光の眩しさによりピントの合わないAの視界では要の顔は映らないけれど、その眩しさがまた興奮材料のひとつであった。Aの姿に「子供っぽい」とちさきが笑う。
「……あれ?光、先行くんじゃないの?」
Aが再び階段を上り終えたタイミングで、光が階段に尻もちを着いた。
「ひと休みしてからな。服も乾かねぇし」
「やっぱりまなかが心配なんだ?」
「ッぎっ………てめ、ちさき!!」
光のバレバレの態度はちさきにまで笑われる始末。笑いながら要とちさきが先に行く姿を見て、Aもまた笑いながら、けれども光の隣へと座った。
「ンでおまえはこっち来るのかよ」
「Aもまだ、服乾いてないから」
ちなみに言うと、四人の服は既に完璧に乾いていたりする。
「………アイツら!」
「光?」
ふと、先程の怒りとは違う困惑の混じる声色が光から湧き出た。立ち上がる光の目線の先をAが見ると、そこには一つの漁船が海を泳いでいた。
「また勝手に漁場広げようとしやがって……」
光が漁船に睨みを効かせたところで、丁度獲物を捕らえていた網が上がり始めた。ギィッと鈍い音をたてながら、少しずつ。やがて獲物の正体とは獲物ではなかったことを、上がる網の全貌を見て皆は悟った。
「まなか………?」
網の中に、彼女はいた。
雲ひとつない晴天。跳ねる水飛沫に冴えた海。脳裏に焼き付いて消えない背景の美しさは、後で思えば彼等の運命を運命として飾り付けていたのかもしれない。
13人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
湊(プロフ) - 続きが気になります。更新待ってます。 (1月20日 22時) (レス) id: 080f4a0e49 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:パスカル | 作成日時:2021年8月11日 15時