セカイの何処かにキミが居る【凪のあすから】 (ページ14)

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好奇のひとみページ14

「え、今の音なに？」
「オナラ？」

好奇の目はひとつに重なった。まなかの髪の隙間から、真っ赤になった首筋が見える。「あ」と誰かが声を落とした時、そうして、まなかは教室から逃げ出していた。

「まなか！！！」

ちさきが一目散にまなかを追う。

「まなか、ちさき………」

二人の名前を囁いて、Aは五秒ほど目を閉じて、そしてゆっくりと開いてから、自分とまなかとちさきの三つの鞄を拾い上げた。更には光と要の席に向かい、彼等の分の鞄までも持って、Aは誰にも目を向けず教室を去っていく。ほんのすこしばかり覚束無いその足どりを、少年が追いかけた。

「さっきは彼奴らが悪かった」
「誰か知らないけど、退いて」
「それ、重いだろ」

Aは嫌だと言わんばかりの顔を隠そうともしない。五個の鞄を片手で持ち上げて、少年の手をパチンと払い除けた。

「悪いと思ってるなら、もう話しかけないで」

鞄は両手で抱え直して、今度こそAはちさきたちの元へと急ぐ。

「A！」

ちさきたちもAを探していたのか、合流は思いのほか早かった。

「まなかの事情は知ってるよ。急ごう」
「ああ……！！」

一番に駆け出した光の後を追い、Aたちは街中を探し回る。しかしAたちと同じ制服を纏う少女は、夕焼けを迎えても一向に見つかることは無かった。

「戻ってるかと思ったけど……」

海へとくだる防波堤を見渡すが、やはりまなかの姿はない。事態は刻一刻と迫る。

「駄目……もうエナが乾いてきて……」
「お前ら！先帰ってろ！」

光は一瞬だけ水を浴びて、すぐさま走り去る。

「光……！」
「あれじゃエナ潤わないよ……！」

光の後を追い、Aも駆け出した。