将来の夢【日向翔陽】 ページ25
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「大好きだよ」
バス停に着いて、もう習慣になったその言葉を口にする。
相変わらず私たちの間には、恋人らしいやり取りなんて、滅多になくて。
未だに手を繋いだこともない。
バス停まで一緒に帰って、それからまたねって声を掛け合う。
たったそれだけだった毎日に、甘いやり取りが加わったのは、いつからだろう。
覚えているのは、真っ赤になって大きな声をあげた翔陽だけだ。
あの時を思い出して、頬が緩んだ。
「どうしたの?」
顔をのぞき込んでくる翔陽は、やっぱりまだ少し幼さが残っている。
それでも、ちらりと見えた首元は男の子らしくて。
なんだか少し、恥ずかしくなった。
出会った頃よりも、私たちは大人に近付いてるんだなって。
変わらなかった身長に差がついているのが、余計にそれを感じさせた。
「ねぇ、翔陽」
名前を呼ぶと、くりっとした瞳が私を捉える。
一点の曇りもない、綺麗な瞳。
「…やっぱなんでもない」
「えー、なんだよそれー!!」
不満そうな顔をして声をあげる翔陽に、笑いが溢れた。
あのね。私、不安になったの。
大人になるのが、怖いの。
翔陽と離れちゃうんじゃないかって。
そんな言葉を飲み込んだ。
「…A!」
「えっ」
しばらく考えるようにしていた翔陽が、声をあげた。
それと同時に、手のひらが温かいものに包まれた。
「おれ、背とかちっさいし、力も強くないし、びびりだし…」
突然始まった翔陽のスピーチ。
「でも! Aへの想いの大きさでは、誰にも負けないから!! だから、」
自分の顔に熱が集まってくるのがわかる。
きっと翔陽は魔法使いなんだ。
「これからも隣にいて下さい!!!」
さっきまでの不安が、キラキラと弾けて消えた。
【さぁ、君と手を取り合って】
どんなことだって、翔陽が一緒なら怖くない。
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朝野(プロフ) - いつも通りさん» ありがとうございます!私の好きなシチュエーションばかりなのでそう言っていただけると嬉しいです…! (2016年9月25日 11時) (レス) id: 112d72d179 (このIDを非表示/違反報告)
いつも通り - 恋が叶ってキュンとするのもあるけど、時々切なくてすごくよかったです!これからも頑張ってください*\(^o^)/* (2016年9月24日 16時) (レス) id: 780192b80a (このIDを非表示/違反報告)
朝野(プロフ) - 飛凜さん» こちらこそ、読んでいただいてありがとうございます!そう言っていただけると嬉しいです…!ありがとうございます。 (2015年9月28日 6時) (レス) id: 112d72d179 (このIDを非表示/違反報告)
飛凜(プロフ) - 完結おめでとうございます。素敵な作品でした。ありがとうございました (2015年9月7日 22時) (レス) id: 9551907ba7 (このIDを非表示/違反報告)
朝野(プロフ) - さらどれ*さん» 素敵なコメント、ありがとうございます!嬉しいです…! (2015年8月30日 10時) (レス) id: 112d72d179 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朝野 | 作成日時:2015年4月19日 12時