その兎は恋をする【呪術廻戦】

ありがとう ページ41

　
　
　
　
　

　
「良かった、目覚めないかと思った」



祈本里香、本来の姿。
将来有望な美人さん、綺麗すぎて目に毒。



「すごいね、一瞬で私だって分かるんだ」

『愛の力、だよ』



夢で見た少女とは外見も衣服も全く違う、でもどこか似た雰囲気の彼女は私を腕の中に抱えてくれていたようだ。



頭がふわふわしてまだ、何も分からない。
何で里香ちゃんは里香ちゃんになっているんだろう。
何も言わない私に里香ちゃんは微笑みかける。



「最後に、お礼を言いたかったの。どうしても、あなたと話したかった」

『……お礼？』



うん、と目を伏せる彼女。
いつまでも腕の中にいてはいけないと起き上がろうとしても右半身が鉛のようでぴくりとも動きやしない。




「里香のことを愛してくれて、ありがとう」





女神のような笑みをたたえる少女。
愛、またそれだ。



『…私が勝手に言ってただけで里香ちゃんにそうやって言わせるために好き好き言ってたんじゃない』



むしろ気持ち悪かったよね、と笑う私の唇にそっと、細く小さな人差し指をひたと当てる。
彼女は悲しそうな顔で首を横に振っていた。



「私は愛が分からない。もらったことが無いもの。…でも、憂太と同じくらい…うぅん、それ以上の熱量で迫られちゃ、嫌でもわかった」



それが愛なんだって、と胸に手を当てて笑う。
本当の彼女はこんなにも笑う子なんだ、と新しい発見を嬉しく思う。今嫌でもって言った？？？
くすくす笑う少女を目をがん開きで見つめるけれど楽しそうにしていたら責められもしない。




「そんなちょっぴり変態さんなAだけど、でもだからこそ、憂太のこと、よろしくね」

『え…乙骨の、こと？』

「うん。だってほら、私は」




一緒にいられないから、と悲しそうに笑う。
笑顔が最高に可愛いこの子にこんな顔をさせたのは、2回目だ。




「まぁ、私に言われなくてもよろしくするんだろうけど……特別よ？許可してあ〜げるっ！」




くっっっそ、可愛いな。ふふふと笑う里香ちゃんにあぁ、これが最後じゃなければなと思う。
けれど願っても叶わない、そんなこと昔から知ってる。




『……うん、里香ちゃんが嫉妬して思わず呪いに来ちゃうくらい乙骨とお近づきになってあげる』




女同士、それから同じ人を想う同士。
よろしくねと微笑んだ彼女の綺麗な指先に、そっと唇をつけた。









さようならと、愛してるの意味を込めて、あなたに。


　
　
　
　
　
　
　
　

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