水没都市 ページ40
『なんで、ないてるの?』
蝉たちの声、鳥の鳴く声、水が流れる音に木々が揺れ葉と葉が擦れる音。
その中に混じる、泣く声、嗚咽。
靴をもってびしょびしょな私は神社の裏で蹲るひとりの少女を見つけた。
「辛いの」
『つらい?』
「うん…」
一度止まった涙がぶり返すようにぐじと唇をゆがめる少女に靴を放り投げて慌てて駆け寄り、前に屈む。しかし私の衣類はびしょ濡れだった。
『ご、ごめん。だきしめようとしたんだけど、ぬれててむりだ』
「…何で抱きしめようとしたの?」
『だって、ないてるから』
『ないてるときにはひとはだこいしくなるから、ひとりでもいいけどそれよりだれかといたほうがいいって』
本に書いてあったとまでは言わなかった。
実際に私がそうやって抱きしめて貰った記憶はないしそもそもぎゃん泣きしないので分かりはしないが、多分大丈夫。
「ふふっ」
正直何に笑ったのか未だに理解出来ていない。
少女は花が咲くような笑顔で涙をどこかへ追いやった。可愛らしい顔立ちの、小さな女の子。
「私、
『A。……おないどし、だよね?』
「さぁ?意外と長生きしてるかもよ?」
意味深な言葉を考えることも無くそうなんだと頷く。
「Aちゃんはどうしてそんなにびしょ濡れなの?川に入ってた?」
『うん。…えぇとね、さかなをいじめてた』
「いますごく言わなくてもいいことを言ったね」
あっははと大きく口を開けて笑う涙蘭が陽の光を受けてきらきらと輝く。
それが綺麗で、同時にそんな綺麗な子と汚い私が一緒にいたらいけない、と慌てて靴を拾いに行く。素足に草がつるつる滑る。
『じゃっじゃあ、わたし、かえるね』
「うん。また来てね、いつでもここにいるから」
『…いつでもいるの?』
「いちゃだめなの?」
眉を顰める少女に慌ててぶんぶんと首を振る。
振りすぎて髪についていた水が草の上にぱたたと落ちた。
「良かった、じゃあ、また会おうね」
次に目覚めた要因は、頬に落ちる大粒の涙だった。
いまいち覚醒しきらない脳がそれが誰かを理解する。
『何で、泣いてるの?』
嗚咽じゃないけど、苦しそう。辛そう。
その涙を拭って上げたいけれど手は伸ばせない。
抱きしめてあげることも出来ない。
『泣かないで、……里香ちゃん』
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甘蜜蜜華(精神安定剤())(プロフ) - しし。さん» はい!発作です!!嬉しがってくれて嬉しいです!(?)更新頑張ってください! (2021年2月9日 16時) (レス) id: 80388bac17 (このIDを非表示/違反報告)
しし。(プロフ) - 甘蜜蜜華(精神安定剤())さん» ほ、発作的な何かが起こってらっしゃる.....?好きなんてそんな、とっても嬉しいですありがとうございます!!! (2021年2月9日 6時) (レス) id: 5f5d2e19fb (このIDを非表示/違反報告)
甘蜜蜜華(精神安定剤())(プロフ) - ひゃぁぁぁ!!!!!!好きです!もうっ!……ああっ!だいすき!! (2021年2月8日 22時) (レス) id: 80388bac17 (このIDを非表示/違反報告)
しし。(プロフ) - Arisuさん» うばぁ〜!!嬉しいですありがたや〜。乙骨先輩良いですよね...まじでリアコ製造機。大好きって言って頂きありがとうございます!!!もうしばらくこの作品にご付き合いくださ〜い!!!!! (2021年1月22日 11時) (レス) id: 5f5d2e19fb (このIDを非表示/違反報告)
Arisu(プロフ) - この作品大好きです!私も乙骨くん推しなんですよ!もう作者様様です! (2021年1月22日 7時) (レス) id: 5506a0fa2c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しし。 | 作成日時:2021年1月1日 11時