愛 ページ33
「そういう事をしてれば、お父さんが帰ってくるんじゃないかって。今はそんな馬鹿な話、ある訳ないと分かる。」
「だけどあの時の私は本当に、彼の死を受け入れられなかった。まだどこかで生きてるって。だから止めてくれるって…期待してた。」
本当の本当に、馬鹿なんだと改めて感じた。
しかしそれを否定するには私には経験がない。
愛し合った者と離れるそれを知らないから、頭ごなしに否定してやることも笑うことも出来ない。
その時一瞬頭を過ぎった誰かさんの姿を振り落とすように首を振った。
『馬鹿だね。死者は蘇りやしない』
「うん、私馬鹿なの」
『…で、今相手は？』
「いないよ、だって、もう意味なんてないもの」
そう言って悲しそうに笑う母の表情は初めて見た。いや、母の顔をしっかりと見たこと自体初めてかもしれない。
『意味がない、ね。その意味の無い行為に付き合わされて色々失くした私にそれを言うの？』
「そ…れは、その。」
ごめんない、と言った彼女を、許す許さない以前に大した感情が湧いてこない。
昨日言うことは言ったし、元々感情の起伏は激しくないし。すっきりしてるからいいんだろう。
『恨んでないよ。結果的に普通に手に入るよりも遥かに大事な友達が出来た』
それはとても嬉しいことだから、感謝とまではいかないが結果オーライってやつ。
高専の友人を思い浮かべて頬が緩む。
隣でそれを見た母も、それに釣られてか柔らかく微笑んだ。
『あなたの愛が、父さんに向き続けている。それならそれで、私はいいんだよ。』
「…ねぇ、これからも、会ってくれたり…。」
恐る恐る尋ねてくる彼女の手は震えていて、カップとソーサーがかたかたと擦れる音が面白くて、彼女のその言葉も面白くてふはっと吹き出す。
『うん。いいよ。だって家族なんでしょ。会うのが、当然じゃない。』
自分でも驚くくらい、そんな言葉が口からするすると流れ出た。
それはきっと本心だからなのだろう。
それならいいや。言いたいことももう思いつかないし。
『私、死ぬまで呪術師でいるよ。だからほんとにたまにしかあなたには会えないと思う。』
『それでも、いいかな。』
今度は私が恐る恐る聞く。
もし私と彼女が仲良くなって、その矢先で命を落としてしまえば彼女はまた同じ自体に陥るのではないか。
「いいよ」
そんな不安が吹き飛ぶくらいの笑顔で彼女はそういった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 403人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
甘蜜蜜華(精神安定剤())(プロフ) - しし。さん» はい！発作です！！嬉しがってくれて嬉しいです！(？)更新頑張ってください！ (2021年2月9日 16時) (
レス) id: 80388bac17 (このIDを非表示/違反報告)
しし。(プロフ) - 甘蜜蜜華(精神安定剤())さん» ほ、発作的な何かが起こってらっしゃる.....？好きなんてそんな、とっても嬉しいですありがとうございます！！！ (2021年2月9日 6時) (レス) id: 5f5d2e19fb (このIDを非表示/違反報告)
甘蜜蜜華(精神安定剤())(プロフ) - ひゃぁぁぁ！！！！！！好きです！もうっ！……ああっ！だいすき！！ (2021年2月8日 22時) (レス) id: 80388bac17 (このIDを非表示/違反報告)
しし。(プロフ) - Arisuさん» うばぁ〜！！嬉しいですありがたや〜。乙骨先輩良いですよね...まじでリアコ製造機。大好きって言って頂きありがとうございます！！！もうしばらくこの作品にご付き合いくださ〜い！！！！！ (2021年1月22日 11時) (レス) id: 5f5d2e19fb (このIDを非表示/違反報告)
Arisu(プロフ) - この作品大好きです！私も乙骨くん推しなんですよ！もう作者様様です！ (2021年1月22日 7時) (レス) id: 5506a0fa2c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：しし。 | 作成日時：2021年1月1日 11時
