恋する兎 ページ4
「始まったよ。」
真希が呆れたようにそう言うのが背後から聞こえる。彼女は私が鷲掴みにしている呪具の刃物部分をゆっくりと引き抜く。
小さな裂傷などどうでもいいと言った過去の私を思い返したのだろう。
もう片方の手は黒板を貫き出てきた特級過呪怨霊祈本里香の大きな掌に触れていた。
彼女の鋭利な爪が喉先三寸、動けば死ぬ範囲。
「り、里香ちゃん…?」
知らない男の声がしても気にはならない。
それより目の前の彼女だろう。
困惑が滲む呻きをあげる彼女は一瞬びくりとしたかと思えばそのまま消えるように去ってしまう。
『あぁ、いなくなっちゃった。』
「はいはい、Aのそれはしばらく封印ね。」
『美人に見惚れて何が悪いんですか。』
はぁとため息をついた私は1歩下がり、そこでようやく彼を見た。
『乙骨憂太さん…ですよね、こんにちは。噂はかねがね聞いておりました。』
噂とは、と不安がる乙骨にこの人は普通だ、と私は勝手に結論を出して席へと戻る。
彼女が出てきてくれないのなら用は無い。
他の3人はそのまま立って五条先生が語る彼の詳細を聞く。
彼女の過去に興味はない私であるがしかし耳には入れておく。
「ってな感じで彼のことがだーい好きな里香ちゃんに呪われてる乙骨憂太くんでーす!!」
呪いあった結果こうなりましたを体現した人らだという事しか分からなかったが、まあいい。
ふと、びしりと指をさされて何だと目を向ける。
生徒の紹介か、なんだ。
「万能型特級術師 鳴瀬A。
普通に強いけどさっき見た通り変わり者だから気をつけてね。」
その後先生はペアを組んで実習だと言った。
その時に私は呼ばれなかった。
「え、と。鳴瀬さんはどうするんですか?」
「Aは他に任務が入ってるんだ。僕がこうして教鞭をとる事自体中々機会が無いもんだし今回のも急だったし、Aが変わってくれたんだよ。」
『一応特級術師だから、人手不足なこの世界じゃ重宝されるんだよ。』
あなたも特級ですけどね、と教室内に3人の特級が存在する事への疑問を抱えつつ教室を出ようと扉に手をかける。
その時ふと思い出して振り返り一言。
『今回は行けないが、今度は私と2人で任務についてもらうからね、乙骨憂太。』
あわよくばその時に里香ちゃんの完全版を拝見出来ますように。
心の中で密かに祈りつつ今度こそ任務へと出かけて行った。
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甘蜜蜜華(精神安定剤())(プロフ) - しし。さん» はい!発作です!!嬉しがってくれて嬉しいです!(?)更新頑張ってください! (2021年2月9日 16時) (レス) id: 80388bac17 (このIDを非表示/違反報告)
しし。(プロフ) - 甘蜜蜜華(精神安定剤())さん» ほ、発作的な何かが起こってらっしゃる.....?好きなんてそんな、とっても嬉しいですありがとうございます!!! (2021年2月9日 6時) (レス) id: 5f5d2e19fb (このIDを非表示/違反報告)
甘蜜蜜華(精神安定剤())(プロフ) - ひゃぁぁぁ!!!!!!好きです!もうっ!……ああっ!だいすき!! (2021年2月8日 22時) (レス) id: 80388bac17 (このIDを非表示/違反報告)
しし。(プロフ) - Arisuさん» うばぁ〜!!嬉しいですありがたや〜。乙骨先輩良いですよね...まじでリアコ製造機。大好きって言って頂きありがとうございます!!!もうしばらくこの作品にご付き合いくださ〜い!!!!! (2021年1月22日 11時) (レス) id: 5f5d2e19fb (このIDを非表示/違反報告)
Arisu(プロフ) - この作品大好きです!私も乙骨くん推しなんですよ!もう作者様様です! (2021年1月22日 7時) (レス) id: 5506a0fa2c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しし。 | 作成日時:2021年1月1日 11時