その兎は恋をする【呪術廻戦】

愛 ページ30

　
　
　
　
　
　

『ま、そうも言っていられないのは自分でも分かってるし。明日もう一度話してみるよ』




1人で勝手に完結させる切り替えの速さを見せるAは五条を見て『あの人の連絡先教えてください』と頼む。
普段使うことのあまり無いスマホをぎこちなく操作する。



『じゃあ、部屋に戻りますか。お疲れ様でした』



当の本人がお疲れ様とは。
しかも颯爽と帰りやがった。
談話室に残された5人は線の細い彼女の後ろ姿を呆然と見ていた。





ばたん、と音がして扉が閉まる。
ゆっくりと歩を進めてベットにぼさっと倒れ込む。
ただ、疲れた体が休みを求めていた。
何を話せばいいんだろう。今更、何を。



先程口から出た言葉を早速後悔するが、こうしなければきっと自分たちは一歩も進めない。
これでよかった。そうなのだろう。



どうなりたい、乙骨の言葉がぐるぐる頭を回る。
正直どうもなりたくない、それは本心。
でも、今からでも家族という愛を、求めてもいいのなら。



軽快な音がキーボード。まだ真っ白なトーク画面に私が送った言葉が表示される。




『明日話がしたいです』




なるようになれ、だ。




　



　
　
　
　


　


　

「本当に一緒に行かなくて大丈夫？」


『しつこい…』



高専の制服しか着る服のない私は真っ黒衣装に身を包んで顰めっ面。
その原因はこの過保護教師五条悟。
出かけようとする私にひたすら大丈夫かと聞いてくるのだ。ため息も出るだろう。



「ったく。Aが大丈夫って言ってるんだからいいだろ」



真希が呆れた様子で教師の背中をどすっと容赦なく手で突く。
これまで掴まれていた両手がようやく解放された。助かる。




『そうだよ。なるようにするから』

「Aがそう言って成功した例見たことないんだよね」

『ならこれから全部成功させてやる』



口角を上げて拳を突き出す。五条のこの心配する気持ちは本物だって分かってる。だからこそ安心させてやらないと。いなくならないって。



一瞬躊躇いを見せた五条は、ゆるゆると首を振ってその感情を落とすように笑った。
拳同士がこつんとぶつかる。
大きな手と、小さな手。




「Aが全然帰ってこなかったら泣いて駄々こねちゃうかもしれないから早く帰ってきてね」


『全力で早く済ませる、だからやめろ』



大の大人が、それだけは絶対にやめてくれ。
真希が私と同じく凄く嫌そうな顔をして拒絶を示して見せた。


　
　
　

　

　
　

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