雷兎 ページ20
「お二人には建物内にいるこの準1級呪霊を払ってもらいます。」
着いたのは田舎の廃ビル。
既に日が落ち、周囲は闇に包まれていた。
若干の肌寒さに拳を握りしめる。
「準1級……僕に祓えるかな…。」
特 級 が 何 を 言 う 。
伸びきった蔓に絡まれていかにもな雰囲気の廃ビルを据わりきった目でそうつっこむ。
特級が二人__たとえ片割れが少々未熟だとしても準1級くらいちょちょいのちょいくらいには楽勝だ。
『本丸の呪霊の強さに釣られて群がる雑魚は多い。乙骨にはそれらを任せるから、準1級自体は私が祓う。心配しなくてもいい。』
男としては複雑だろうが、と彼を横目にポケットから取り出した手袋をつける。
指先を使う呪法なだけに流石に手のひらだけを覆うデザインとなっている黒のこれは五条先生から贈られた、いつかの誕生日の時に。
冷えた人差し指にそっと唇をつけて熱を覚えさせる。寒くて指先が使えませんなんて言語道断、まぁそもそも北国育ちの私は寒さに耐性が出来ているから問題は無いのだが、一応。
「では帳を降ろします。私はここで待っていますので。」
伊地知さんはどうしてかいつも、見送ってくれる時に深く礼をする。
彼の仕事の質と量を知っている私としては深い尊敬の念を抱いているからこそそんな風に頭を下げられると困惑するのだが。
いつどこが死地となるかは分からないものだから、彼も怖いのだろう。
私達2人が死体となって返って来るその時が。
『はい、行ってきます。』
ここ最近で、久しぶりに自然と笑みがこぼれた。
ふわりと笑う私はそのまま廃ビルの寂れた扉を押し開けて乙骨の方を向く。
『じゃあ、行こうか。刀は大事に持つんだよ。』
それを奪われたら修行の成果とやらも見てやれないからね、と言えば彼は弱々しい表情からきりっとした男の表情を見せる。
里香ちゃんにはきっと会えないだろうなぁ〜と残念に思いながら薄暗い廃ビルをふと見やって。
扉を開けた先にある明らかに廃ビルではない景色に私たちは吸い込まれた。
403人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
甘蜜蜜華(精神安定剤())(プロフ) - しし。さん» はい!発作です!!嬉しがってくれて嬉しいです!(?)更新頑張ってください! (2021年2月9日 16時) (レス) id: 80388bac17 (このIDを非表示/違反報告)
しし。(プロフ) - 甘蜜蜜華(精神安定剤())さん» ほ、発作的な何かが起こってらっしゃる.....?好きなんてそんな、とっても嬉しいですありがとうございます!!! (2021年2月9日 6時) (レス) id: 5f5d2e19fb (このIDを非表示/違反報告)
甘蜜蜜華(精神安定剤())(プロフ) - ひゃぁぁぁ!!!!!!好きです!もうっ!……ああっ!だいすき!! (2021年2月8日 22時) (レス) id: 80388bac17 (このIDを非表示/違反報告)
しし。(プロフ) - Arisuさん» うばぁ〜!!嬉しいですありがたや〜。乙骨先輩良いですよね...まじでリアコ製造機。大好きって言って頂きありがとうございます!!!もうしばらくこの作品にご付き合いくださ〜い!!!!! (2021年1月22日 11時) (レス) id: 5f5d2e19fb (このIDを非表示/違反報告)
Arisu(プロフ) - この作品大好きです!私も乙骨くん推しなんですよ!もう作者様様です! (2021年1月22日 7時) (レス) id: 5506a0fa2c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:しし。 | 作成日時:2021年1月1日 11時