兎と無下限 ページ15
「え、あの子何してるの…?」
「……。」
目の前の、さっきまでこちらを口説こうと必死だった女性は小さな背丈の少女が行う奇行に目を見開き、顔を青くして震える。
僕とて驚いている。呪霊とコミュニケーションを図りものを差し出す少女などそうそういない。
自然と上がる口角。それを不気味に思ったのか今度はこちらを見て冷汗を流す女。
邪魔だから、どこかに行ってくれないかな。
『お金多く出しちゃったから、受け取ってよ。』
自動販売機の赤い塗装とお揃いの赤い缶をそれなりに意思疎通の出来そうな呪霊に話しかけながら掲げる少女。正直意味がわからない。
だが、だからこそ面白い。
ペットボトルのお茶をずずと飲む少女、呪霊をなんだと思っているのか、祓う気もなさそう。
そんな彼女の空気を読み取ったのか呪霊が恐る恐る赤缶に手を伸ばし、ぱしと受け取る。
「…が…とぉぉ…ぉ。」
恐らく、お礼。それに少女も気づいたか、どこまでも暗い渦をまくような不思議な瞳が少しばかり輝いた。年相応の表情、とは言えないが。
『…何だ、可愛いじゃん。』
ふっと、何故か困ったような嬉しそうな横顔。
少女の目の前にはいつの間にか黒髪の可愛らしい、少女よりかは背の低い女の子。
間違いなく先程の呪霊だろう。
『じゃ、もういいの?』
「うん……ありがとう。」
美しい花が咲くように笑う呪霊を、どこまでも優しい笑みを浮かべながら少女は手を前に出して。
彼女の黒髪に触れた瞬間、呪霊は灰になり形も無く崩れ落ちた。
なんだアレ、と率直に思った。
アイヌ呪術連の秘蔵っ子か、ただの一般人か。
ただの一般人が呪いを扱う?馬鹿な話だ。
窓見習いか何かだろ。
「ねぇ君、ちょっといい?」
『……何でしょうか。彼女さん、いなくなってますが、いいんですか?』
うん、どうでもいい。初めから興味無いし。
そう言えば少女は少し体をこちらに向ける。
話をする気になる基準がよく分からない。
『言っておきますが、お金は大事なのであげませんからね。』
ガキのはした金を誰がたかるんだよ。
学生の頃の僕なら間違いなくはなった言葉だが今は違う。
「じゃあなんか飲み物買ってよ、喉乾いた。」
『クズですね、さようなら。』
踵を返した少女に冗談だよ、と話しかける。
「君はさ、呪いって知ってる?」
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甘蜜蜜華(精神安定剤())(プロフ) - しし。さん» はい!発作です!!嬉しがってくれて嬉しいです!(?)更新頑張ってください! (2021年2月9日 16時) (レス) id: 80388bac17 (このIDを非表示/違反報告)
しし。(プロフ) - 甘蜜蜜華(精神安定剤())さん» ほ、発作的な何かが起こってらっしゃる.....?好きなんてそんな、とっても嬉しいですありがとうございます!!! (2021年2月9日 6時) (レス) id: 5f5d2e19fb (このIDを非表示/違反報告)
甘蜜蜜華(精神安定剤())(プロフ) - ひゃぁぁぁ!!!!!!好きです!もうっ!……ああっ!だいすき!! (2021年2月8日 22時) (レス) id: 80388bac17 (このIDを非表示/違反報告)
しし。(プロフ) - Arisuさん» うばぁ〜!!嬉しいですありがたや〜。乙骨先輩良いですよね...まじでリアコ製造機。大好きって言って頂きありがとうございます!!!もうしばらくこの作品にご付き合いくださ〜い!!!!! (2021年1月22日 11時) (レス) id: 5f5d2e19fb (このIDを非表示/違反報告)
Arisu(プロフ) - この作品大好きです!私も乙骨くん推しなんですよ!もう作者様様です! (2021年1月22日 7時) (レス) id: 5506a0fa2c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しし。 | 作成日時:2021年1月1日 11時