兎と無下限 ページ11
父が死んだ。
事故だと言われた。そうなんだと思った。
人って案外簡単にいなくなるんだ、とも思った。
「A、一緒に寝よう。」
葬式やら火葬やら、色々落ち着いて家に帰った一日目の夜に、母はそう言った。
当時十歳の私は何も思わずにそれを受け入れた。
それとは、母曰く愛情。
「Aはずっと、私だけと一緒にいてね。約束よ。」
『うん。』
母は一点集中型、どうやら、ひとつに手をつけるともうひとつに目がいかないようだった。
そういえば、父がいた時もそうだったかもしれない、と今更ながらに思う。
「お母さん遅くなるけど。大丈夫よね。」
あれから数ヶ月経った。
いつもと同じく、『うん。』と答えた。
母は新しい男を見つけたらしく帰りが遅くなった。しかし寂しいだとかは無い。
だってそれは、父さんがいたころと同じだから。
それが行われるのが家の中か外かだけの違い。
『…。』
親指と人差し指の爪をがりがりと削りあった。
ヤカンを火にかけて、お湯を沸かした。
お湯を注いでフタをし、タイマーをセット。
数分待ってカップ麺のフタをぴりぴりと開けた。
『いただきます。』
ごみばかりが転がる家にその小さな声は吸い込まれて、誰にも届かなかった。
「あんたの母さんね、おかしいのよ。」
祖母が田舎から出て、家を訪ねてきた。
突然の事だったが掃除は済んでいたので、母がそこらに捨てたごみがなく、清潔感があった。
お茶を出して座ると、彼女はそう言った。
自身の娘をおかしいという祖母。
私はそれを変だと思うよりも、確かにと思った。
すこしばかりの何かが心の中に生まれた。
「ひとつしか見えなくて、自分でも駄目だと分かってる、なのに変われない。」
あ、と思った。
次にくる言葉が、何となく分かったから。
心の中に生まれた何かが、小さくなった。
「おかしいけど、それでもあの子にはAしかいない。一人にさせないでね。よろしくね。」
『…うん。』
「そう言えば…この家、綺麗にしてるのね。あの子が掃除してるの？」
『うん。』
嘘だ。あの人は二日くらい帰ってきていない。
金だけ渡して男に会いに行ったっきりだ。
私は、小さくなった何かを期待して嘘をついた。
「そう、良かった。ちゃんと出来てるのね。」
心の中の何かは、完全にいなくなってしまった。
私はまた、『うん。』と言って口角を上げた。
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甘蜜蜜華(精神安定剤())(プロフ) - しし。さん» はい！発作です！！嬉しがってくれて嬉しいです！(？)更新頑張ってください！ (2021年2月9日 16時) (
レス) id: 80388bac17 (このIDを非表示/違反報告)
しし。(プロフ) - 甘蜜蜜華(精神安定剤())さん» ほ、発作的な何かが起こってらっしゃる.....？好きなんてそんな、とっても嬉しいですありがとうございます！！！ (2021年2月9日 6時) (レス) id: 5f5d2e19fb (このIDを非表示/違反報告)
甘蜜蜜華(精神安定剤())(プロフ) - ひゃぁぁぁ！！！！！！好きです！もうっ！……ああっ！だいすき！！ (2021年2月8日 22時) (レス) id: 80388bac17 (このIDを非表示/違反報告)
しし。(プロフ) - Arisuさん» うばぁ〜！！嬉しいですありがたや〜。乙骨先輩良いですよね...まじでリアコ製造機。大好きって言って頂きありがとうございます！！！もうしばらくこの作品にご付き合いくださ〜い！！！！！ (2021年1月22日 11時) (レス) id: 5f5d2e19fb (このIDを非表示/違反報告)
Arisu(プロフ) - この作品大好きです！私も乙骨くん推しなんですよ！もう作者様様です！ (2021年1月22日 7時) (レス) id: 5506a0fa2c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しし。 | 作成日時：2021年1月1日 11時
