34.裏の顔 ページ34
が、聞かれた本人は一切動揺することなく、何食わぬ顔で有岡を見つめている。
「俺に‥‥俺に協力してたのは結局涼介様にお嬢様の情報を流すためだったのかよ!!!?」
「まぁ、そういうことになるかな。」
「じゃあ、お嬢様を守るために動いてたのはお前の意思じゃなくて‥‥涼介様の命令で」
「伊野尾という魔法使いから守る、それが俺の任務だったから。‥‥だから俺の部屋で彼女を眠らせた時さ、もういっそこのまま山田家に行こうかなとも思ったんだよ。でも、それじゃあ」
楽しくないんだってさ、と隣にいる涼介を一瞥した。
淡々と話していく中島に、もはや怒りを通り越して呆然とする有岡。
「俺、最初は半信半疑だった。でも、信じてたんだ‥‥。確かに涼介様の執事だったけど、今はもう立派な経営者なんだからそんなわけないってさ。だから裕翔をターゲットにして、それで万が一俺に何かあったら、本当にお嬢様を託すつもりだった。なのにお前は‥‥」
「それは大ちゃんの勝手でしょ?勝手に信じてもらっても困るよ。あと言っとくけど、俺はこの人の命令でしか動かないから」
「お、まえ‥‥本気で‥‥言ってんの、か‥‥」
鈍器に殴られたような感覚に襲われ、有岡の身体はゆっくりと膝から崩れ落ちていく。
「‥‥じゃあAが好きっていうのも嘘?」
それを見た侑李がゆっくりと歩を進め、有岡のすぐ隣で止まった。
「そ、れは‥‥」
一変して、動揺し始める中島。
「水族館でゆーてぃ、言ってたよね。好きになっちゃいけない人を好きになった、だから感情を回収してほしいって。あれは」
「‥‥え?は?なに裕翔お前‥‥」
侑李の言葉に、中島ではなく涼介が反応した。
だが、中島の口は真一文字に結ばれたまま。話し始める気配はない。
「‥‥ていうかさ、なんでこんなまどろっこしいことしてんの、涼介。」
今度は先程から隣で話を聞いていた涼介に、侑李が毅然とした態度で問いかけた。
「‥‥知念には関係ない。」
「いや、ないわけないでしょ。僕、Aの許婚だよ?結局さ、他の魔法使いに依頼したけど、なんだかんだ心配だからゆーてぃに頼んだってことだよね?」
「だったらなんだよ‥‥」
「なんで自分で魔法かけないの?涼介だって魔法使いなんだから自分でやれば」
「できねぇんだよ!!!!」
急にヤケになる涼介。しかし、一呼吸おいてゆっくりと口を開いた。
「俺に‥‥あの魔法は使えない。」
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作者名:日和 | 作成日時:2020年11月22日 18時