30.意外な人物 ページ30
「てかさー、魔法使いが魔法かけた相手にやられて挙げ句の果てに記憶喪失って聞いたことないんだけど。」
「‥‥す、すみま、」
慌ててその場で姿勢を正そうとする慧。だが、涼介のわずかな指の動きで、慧の身体が一気に宙に浮いた。
「本来ここに来るのはお前でも有岡でもないはずでしょ。」
「分かってます‥‥」
「いちいち探すのめんどくさいから、案内してくれる？」
「でしたら私がご案内致します。」
そう言って、有岡が一歩前に出た。
「ここへ連れてきたのは私ですから」
「あっそ、じゃあお前が案内してよ。」
有岡の身体もふわりと宙に浮かぶ。
「有岡、Aがいる部屋を鮮明に思い浮かべろ」
「‥‥はい」
目を閉じて、必死に思い浮かべようとする有岡。
だが、すぐに涼介が溜め息を吐いた。
「有岡、お前さ‥‥俺に嘘吐くってどんな度胸してんだよ」
「‥‥た、大変申し訳ございませんっ！
もう一度、」
「いいよもう、見つけたから。ついでに先客も。」
「先客‥‥！！？」
とにかく行くぞ、と指を鳴らすと、三人の姿は一瞬で煙のように消えていったのだった。
そして、涼介が現れた頃、侑李の部屋では‥‥
時折会話を交わしながら、有岡が戻るのをひたすら待っていた。
「‥‥にしても、遅いね。」
「まさか、何かに巻き込まれたんじゃ‥‥」
「薮は多分戻ったんだと思う。何かあれば連絡がくるから。でも有岡は、」
「有岡が道に迷うなんてありえないよ。私が知る限り、一度もない。」
事の重大さに、顔を見合わせる二人。
「わ、私、有岡探してくる‥‥！」
「だめだよ！」
立ち上がろうとした彼女の手を侑李が掴んだ。
「薮が言ってた部屋は別棟だからここから車で」
「でも！」
「A、落ち着いて。有岡に言われてたじゃん、ここで待っててって。」
「だからって、このままなんて」
「‥‥じゃあ」
僕が行かせないよ。
掴んだ手がぎゅっと強まる。
目を丸くする彼女。
「ゆう、り‥‥？」
「わがままだって思ってもらっていい。でも、僕は守らなきゃいけないの。」
「守る‥‥？」
「そう、」
あの男から。
そう言って、侑李が指差す先にいたのは
「こんばんは。月影さん‥‥いや、」
山田Aさん。
慧の魔法によって、そのまま帰宅したはずの中島だった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：日和 | 作成日時：2020年11月22日 18時
