27.賢明な執事 ページ27
「どういうこと‥‥？なんで、」
「そこまでは聞けなかった‥‥。」
「お嬢様、ものすごく嫌な予感がしてならないのですが‥‥」
それもそのはず。彼女の兄である山田涼介は、彼女とは違い、最強と名高い正真正銘の魔法使い。だが、普段は部屋に籠ってるため、妹である彼女さえも姿をほとんど見たことがない。ちなみに、かつて彼専属の執事として仕えていたのが中島であり、その頃から侑李も山田家を頻繁に訪れている。
「慧は、ただ、お兄様に転がされていた‥‥」
「ええ、おそらく、」
「だとしたら、ゆーてぃも絡んでる可能性も」
「ゆーてぃ‥‥って！？」
「ああ、お嬢様はご存知ないですよね、中島はかつて涼介様専属の執事でしたので。」
彼女にとってものすごく重大な話を、さらりと言ってのける有岡。
「待って聞いてない！！知らない！！！」
「あの場で申し上げるのはさすがに危険だと判断致しまして」
「危険‥‥？」
「かつて、とはいえ主従関係があった以上繋がりがないとも言い切れませんから。」
「でも有岡、中島さんのことかなり信用してたじゃない。」
「それは、お嬢様がこの話をご存知ない、そして中島がお嬢様と初対面という前提あってこそですよ。」
きょとんとする彼女。
すると、有岡が彼女に近寄り、耳元で囁いた。
「そうでなかったら、素直にあの作戦にお乗りにならないでしょう？」
「た、確かに‥‥」
慧を欺くための嘘、デート‥‥今になって考えると恐ろしい。なぜなら、彼女の兄は魔法が使えることを良いことに少々強引な性格の持ち主。そんな魔法使いと中島に未だに関係があるのであれば、危険人物として接触する必要が出てくる。
「‥‥って、有岡、まさかそれを分かってて‥‥！」
「あのデートの護衛役は奇跡的ですが‥‥念には念を、でございますよ、お嬢様。」
少し自慢気な顔で、ちらりと彼女を見た。
「‥‥さすが、私の執事ね、有岡。」
「もったいなき、お言葉でございます。」
「‥‥ちょっと、さっきから二人で何話してるの？」
僕置いてけぼりなんだけど、と少し口を尖らせる侑李。それを見て、有岡が慌てて頭を下げた。
「大変失礼いたしました。中島のことについて、お話ししていただけですよ。」
「あー、Aは、昔のゆーてぃ知らないのか。ま、同じ家でもあれだけ広いし、涼介と真逆の生活してたらまず会わないよね。」
「おっしゃる通りでございます。お嬢様が太陽ならば、涼介様は月ですから。」
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作者名：日和 | 作成日時：2020年11月22日 18時
