25.言葉の魔法 ページ25
「お前‥‥お嬢様に何してる!!」
「Aに触るやつは容赦しないよ!!」
すぐさま、有岡と侑李が駆け寄った。
だが、
「ったくもう、どいつもこいつも生意気だな!!!!」
慧の振りかざした手によって突如風が巻き起こり、そのまま遠くまで吹っ飛ばされる二人。
一方、彼女は慧に組み敷かれ、両手を押さえつけられて全く身動きが取れない様子。しかし、その目はただ恐怖に脅える目ではなかった。何かを訴える、そんな目。
「A、」
「慧‥‥」
「あの二人、どうなってもいいの?」
部屋の隅に倒れ込んでいる有岡と侑李を一瞥し、彼女を冷酷な視線で見つめる。
「‥‥分かるよね?」
「わ、たしは‥‥‥‥私は‥‥もう、慧の人形じゃ、ない‥‥!!!」
震えながらも絞り出された言葉。それは慧にとって想定外だった。いつもは冷静な彼だが、今回ばかりはさすがに動揺を隠せない。
「え‥‥俺に逆らうの‥‥!?」
「ちが、う」
「じゃあ何、」
「私、に従う、だけ」
「は‥‥?」
彼女の独特の言い回しに、ぽかんとする。
が、それこそ彼女の作戦。
慧が気を抜いたその刹那、ありったけの力を込めて掴まれていた両手を振りほどき、そのまま彼の顔にかざしたのだ。
「ちょ、何してんの!?」
「慧の怒り、私が回収してあげる!」
笑みを浮かべる彼女に、思わず怯む慧。
「A‥‥!?そんなことしたら魔法かかったままだよ!?俺が記憶失くしたら一生純粋な人間には、」
「いいの、それでも」
かざした手が、ゆっくりと光り始めた。
硝子のような煌めきが、部屋の隅にいる二人の目にも映り込んでいく。
そして突如現れた大きな一筋の光。侑李は不思議そうに光っている方向に視線を向ける。一方、有岡は瞬時にその光の意味を理解し、彼女を止めようと全力で走り出した。
「お嬢様何をしてらっしゃるのですか‥‥!!」
「‥‥有岡、気づいたんだよ私。」
彼女の手はさらに輝き、対して慧の顔は少しずつ血の気のない顔に変わっていく。
「魔法が解けなくて、侑李の記憶を失くしたままでも、魔法使いのままでも、何も変わらないってことに。」
「え‥‥?」
「私は有岡を助けたくてずーっと慧の側にいた。でも、もうその必要はない。むしろ、今の私は侑李と有岡の隣にいるべきなの。だから、」
魔法使いの私が、二人を助けるよ。
慧にかけてもらったこの魔法で‥‥!!!!
彼女が放った言葉とともに、まばゆい光が部屋中を包み込んだ。
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作者名:日和 | 作成日時:2020年11月22日 18時