22.大切なもの ページ22
「どういうこと‥‥彼に何したの」
「うーん、ざっくり言うと、俺に対する怒りの感情取っちゃった。」
「え、」
「大丈夫、それ以外はなーんにもしてないから」
僕のこと信じて、と彼女に近づいていく。
すると、侑李がすかさず彼女を隠すようにして間に入った。
「A、信じちゃだめだからね。絶対、まだ何か隠してる。」
「うわ、ひっどいなぁ。」
「有岡と一緒にいた人間がいない時点で、おかしいから。」
「あー、中島くんだっけ?
彼なら帰ったよ、この場所だけ言い残して。」
時折天井を見ながら、くるくると円を描くように歩き始めた。
「意外と簡単だった。」
「‥‥んなわけないよ。どうせ無理やり言わせたんでしょ。」
「ふふ、バレたか。」
歩がぴたりと止まる。
「で、何が目的?」
侑李は不審者を見るような目で慧を睨んだ。
「んー、君の後ろにいる魔法使いを取り返しにきた。」
「素直に渡すとでも?」
「思ってないよ。許婚なら尚更。だから、」
刹那、慧が指をパチンと弾く。
すると突然彼女が首元を押さえながら苦しみ出した。
「ぐっ‥‥!? げほっ‥‥‥‥‥‥」
「なっ、どうした‥‥!?」
苦しさのあまり、体勢が崩れて倒れかけた彼女を慌てて侑李が支える。
「おい、どうなってんだよ!!」
「今、彼女に魔法かけた。」
こてんと首を傾げながら人差し指を立てた。
「魔法‥‥?」
「首元、みてごらん。」
「これって‥‥」
苦しんでいる彼女の首には明らかに輪のような跡。
「見えない首輪。」
「どうすれば解ける。」
「こっちに渡してくれればすぐ解いてあげる、ほら、早くしないと気絶しちゃうよー」
目の前の彼女は、慧の言うとおり気絶寸前。
でも、渡したらきっと二度と。
いったいどうすれば‥‥
そんな時だった。
「今すぐ解け、お前の首とぶよ?」
それは、侑李も見慣れた顔。さっきまでソファーに座ってとろんとしていたはずの人物が、慧に背後から銃口を突きつけた。
「ずいぶん大胆だねぇ、大ちゃん。もう少し従順でいてほしかったんだけどなぁ。やっぱりお嬢様が絡むと」
「‥‥ごちゃごちゃ言ってないで」
「はいはい、分かったよ」
仕方ないな、といって再度指を鳴らす。
すると、苦しむ声が消え、彼女の力が一気に抜けた。
「A‥‥!?」
「‥‥ゆう、り‥‥‥‥」
「よかった‥‥」
意識があることに安堵する侑李。
「いのちゃん、いい加減さ」
「そう簡単に手放すわけないにもいかないんだよね。」
依頼主の言うことは絶対、だから。
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作者名:日和 | 作成日時:2020年11月22日 18時