感情回収、記憶抹消いたします。 (ページ19)

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19.悪魔の策略ページ19

真顔を装いながら、中島の顔を見つめる有岡。
「それ、本当？」
慧の視線が有岡から中島に移った。
「ええ、ここ広いから疲れちゃったみたいで。でも、まだ感情回収できてないから帰れないって言ってて。なら、僕の家で休んでてってことで。」
苦し紛れの嘘。しかし、中島は真剣な顔で淡々とまるで事実かのように慧に説明していった。

「‥‥じゃあ聞くけど、なんで大ちゃんも中島くんもここにいるの。二人とも同行しないっておかしいよね？」
「それは、月影さんが拒んだから。」
「拒んだ？」
「喧嘩したんです。そしたら一人になりたいって聞かなくて。でも、お嬢様が普通に歩いてたら絶対危険だからってなんとか説得して、僕の家に行くように手配しました。」

ふーん、なるほどね。
一通りの説明を聞き終えると、慧は顎に手を添えて上の方をぼんやりと眺め始めた。

「まー、そういうことなら仕方ないか。
でも、大ちゃんは任務失敗だよね。」
護衛できなかったってことでしょ、と冷たい声が響く。

「‥‥それに関しては、何も言えない」
「ほぅ、認めるんだ。」
悔しそうに唇を噛む有岡を見て、慧が片方だけ口角を上げる。

「じゃあ、今度は大ちゃんの番だ。」
忘れさせてあげるね、すべて。

「待って、"今度は"ってどういうこと？俺は」
「‥‥僕は、記憶の操作ができるからね。上書きするのも、消すのも、元に戻すのも。」
お手のものだよー。
にこにこしながら、上に向けた手のひらを顔の横でくるりとまわす。

「元に戻す‥‥！？なら、魔法を解かないまま、お嬢様の記憶を戻すこともできるってこと？」
「そうだよ。」
「じゃあ、」
「ちょっと大ちゃん！？」
慌てて中島が割って入る。

「魔法使いの言うこと信じちゃだめでしょ！」
「だって、記憶が戻れば、お嬢様に魔法をかけるように頼んだ人間が誰か分かるかもしれないだろ！」
「だからって」
「それ以外に方法があるなら教えてくれよ！！！！」
やりきれない思いが木霊する。

「‥‥俺は、元通りになるなら手段は選ばない」
「何言って」
「ね、大ちゃんさ」
いきなり慧が近づき、有岡の顔に手をかざした。

「何する気、」
「その感情、回収させて。」
そういうと、かざした手はきらきらと光り、逆に、有岡の顔はどんどん青ざめていく。

「‥‥これは高く売れそうだねぇ。」
そして、慧が自らの手のひらを眺める頃。
「‥‥大ちゃん！？」
「ん？なぁに、裕翔」
まるで何事もなかったように、にこりと笑う有岡がいた。