18.空っぽの作戦 ページ18
一方、水族館に残った有岡と中島はというと、
「で、大ちゃん、作戦は！！」
「‥‥こ、これから考える！」
「は‥‥！？なに言ってんの？」
焦燥に駆られていた。
「あれだけ言っといて何もなかったの！？」
「いや、だって魔法使いと普通の人間が
戦うって聞いたことあるか！？」
「ないけどさ、でもあれだけ自分の主に向かって主張するって」
「ああでも言わないとお嬢様は聞いてくれないから。俺だってほんとは嫌だし。」
こんなんなければ一緒にいた、そう言って左手首の輪を触る。
「てかさ、大ちゃんって護衛で来たんだよね？この状態、かなりやばくない？」
「ああ、」
そうだね、と首を縦に振る。
「いや、冷静に言ってる場合じゃないでしょ！！」
「‥‥分かってるよ、もう、覚悟してる。」
慌てふためく中島とは対照的に、有岡はまるでこれから戦場に向かうかのような、凛とした佇まい。
「裕翔」
「なに？」
「もし俺になんかあったら、お嬢様のこと頼んだよ。」
「え？いや、ちょっとなに急に！それじゃあまるで‥‥‥‥、まさか約束破る気なの？」
「破りたくねぇよ、俺だって‥‥」
キリッとした表情が少しずつ崩れていく。
「俺だって、ほんとは今すぐお嬢様のところ行きてぇよ！！！！‥‥今までずっとお仕えしてきたのは俺だ。ほんとは納得せずに知念様とここから出ていったことくらい、俺には分かる。」
「なら、」
「でも、俺の頭じゃ分からないんだよ。どうすれば太刀打ちできるのか。」
「‥‥その輪っか、取ったらどうなるの。」
「どうなるって‥‥」
それ取ったら、爆発するよ？
ゆっくりとした足取りで現れたのは、輪を嵌めた魔法使い、慧だった。
「いのちゃん‥‥」
「貴方が‥‥噂の魔法使い、か」
「ごもっとも。君が中島くんかな？」
「そう、ですけど‥‥」
ぎこちない空気と、殺伐とした空気が混ざり合う。
「あれ、大ちゃん、Aは？」
「‥‥さあ？まあこれだけ大きな建物だし、もしかしたら」
「大ちゃん、ほんとのこと言った方が身のためだよ。」
嘘つくと電気流れるから。
耳元で囁かれた言葉。有岡の顔が途端に曇る。
やっぱり、俺には‥‥
諦めかけたその時、隣から助け船が出た。
「月影さんなら、先に僕の家に行きましたよ。」
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作者名：日和 | 作成日時：2020年11月22日 18時
