7話 ページ8
『っ…』
あまりの痛さで目を覚ましたのは、夜明け前だった。
包帯の中の傷が心臓の音に合わせて疼く。柔らかいベッドに体を沈めて静かに呼吸を繰り返し、私はついに上体を起こした。
いたい…。
手首を強く握りしめるもその痛みが治まる気配はまるでない。
『おついち、さん…』
シングルベッドに当然その姿はない。
だけど確かに彼の香りが残っていて、きっとここは彼の部屋なんだろうと予想がつく。
あのボロアパートの部屋よりも広く、扉から一番遠いところに置かれたベッドから部屋を一望できた。
家具は思った以上に少なく、ベッドの他には大きな黒を基調とした衣装棚が置かれてあり、その他テレビや机などが置かれている。
『水飲みにいこうかな…』
誰に聞く訳でなくポツリとこぼし、ベッドからゆっくりと出る。
一つだけある窓からはだいぶ傾いた月が部屋を青白く照らしていた。もうすぐで朝だ。
私の記憶が途切れた時は3時頃だったから、そこまで寝ていないのかもしれない。
扉をそっと開けて廊下に顔を出すと、当然ながら人の気配はない。
それよりも、あまりの部屋の多さに迷いそうになる。リビングはどこだろう。そもそもここは何階？適当に廊下を練り歩き部屋の扉を確認していくけれど、プレートなどは付いてなかったため、何のための部屋なのかは気になるところだ。
それから暫く歩き続けると、一つだけ光が漏れている部屋を見つける。
それは廊下の一番奥の部屋だった。
ジクジクと痛む手首に顔を顰め、私は声を漏らさぬようそっと隙間から中を覗く。
コンピューターの明かりだろうか、暗さに慣れた目が一瞬だけ痛みを覚え、すぐに治る。
大きなモニターが数個設置されてあるそこは、見た感じ制御室か何かかと想像がついた。
そのモニターや沢山の機械の中心に座る見覚えのある後ろ姿。おついちさんだ。
何やらキーボードを打ち込んでいる。
何をしているんだろう…。そんなちょっとした好奇心にかられてモニターを見るが、光が強すぎるのかよく見えない。
邪魔しないうちに帰ろう。
そう踵を返してまた階段を探す。
漸く見つけた階段を降り、やっとこさリビングに辿り着いた私はコップを借りて水道水で喉を潤した。
すっきりとした気分に幾分か手の痛みも引いた。時計を見るとやっぱりあれから1時間程度しか経っていない。それにしても、おついちさんってばこんな夜中までお仕事か…
大人の人って何かと忙しいんだな、と納得して部屋に戻ろうかと思った時、
ふいにリビングの扉が開いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 377人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
北海ユキノコ(プロフ) - 続きを楽しみに待ってます！頑張って下さい！応援してます！ (2023年2月20日 17時) (
レス) id: cfe4c19063 (このIDを非表示/違反報告)
北海ユキノコ(プロフ) - いつも、ワクワクしながら読んでます！ (2023年2月20日 17時) (レス) @page41 id: cfe4c19063 (このIDを非表示/違反報告)
。(プロフ) - ばおばぶさん» コメントありがとうございます…！何度も…！！本当にありがとうございます。これから登場人物も増えていく予定ですので、お楽しみくださいませ！！ (2022年6月20日 0時) (レス) id: 670de1abda (このIDを非表示/違反報告)
。(プロフ) - konbu_3723さん» コメントありがとうございます…！とても嬉しいです…、リアルの方でバタついていたのもありそのお言葉で涙が出てしまいました。更新頑張ります。暑い日が続いてます。konbuさんもどうかお体に気をつけてください。 (2022年6月20日 0時) (レス) id: 670de1abda (このIDを非表示/違反報告)
ばおばぶ(プロフ) - 御三方にハマってから占ツクでこちらのお話を見つけて実は何度も見に来ていたので更新とても嬉しいです！！今後の展開も楽しみです(*´﹀`*) (2022年3月26日 2時) (レス) @page38 id: 656b6dd078 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：。 | 作者ホームページ：http:/http://commu.nosv.org/p/tensan819
作成日時：2019年3月7日 18時
